まどろみ
受:植野(ウエノ)
攻:高坂(コウサカ)
昼ご飯も食べ終わり満腹で、ぽかぽかと日差しがちょうどよく当たる窓際の席ということもあってとにかく眠い。
しかも今喋っているのはおじいちゃん先生と呼ばれる退職したけど特別講師として呼ばれた人で。その人柄とか優しいとことかゆっくりとした喋り方が大好きだったけど、今この瞬間にそれはまずい。
噛み殺せなかった欠伸を手で隠し、ずずずと机に落ちていく。
「ねむい・・・」
空気で溶けたはずの俺の声に、隣がクスリと笑ったのに気づいたけど、既に夢の中に入る直前だった俺はそのまま机に突っ伏して寝てしまった。
******
両腕を枕にして完全に寝てしまった植野をじっと見る。
――ああ、可愛いな。
こんなまじまじと見ていられるなんて、今日の朝いきなり席替えをするなんて言った担任に、感謝しなきゃな…。
今年こそは絶対仲良くなって、植野に俺を認識してもらわないと。
去年は別のクラスだったから諦めていたけど、こうして運が味方してくれているんだから、頑張るほかないよなぁ。
「………ん、…」
ころりと向きを変えた植野の顔が、俺のほうを向く。
今が授業中じゃなきゃ写真撮れたのに。
……まいった。去年まではこんな危ない思考じゃなかったのに、思わぬ近距離にタガが外れてきたらしい。
ふるふると頭を振って前を向けば、もうすぐ授業終了時間。
そろそろ起こさないとまずいな。
「……植野、」
「んん、…」
ああ可愛い、可愛い。
さらりと顔にかかる前髪を撫でながら、その感触を楽しむ。
「植野、起きな…」
自分でもこんな声出せたのかってくらい、甘い声だ。
前に座っていた浅野の身体が震えたのに気づいたけど、目に浅野を映した一瞬の時間さえ惜しいと思ってしまうほど、俺は末期らしい。
「んあ?……あー、……ありがと、高坂」
軽く腕を揺すると、ぴくりと動いてゆっくり目を開いた植野。
ぼやっとしたまま俺を見る目と目が合い、状況を把握した植野に笑顔で名前を呼ばれた瞬間、外れかかっていたタガが完全に外れた音を確かに聞いた。
――…植野を監禁しないで済む方法はあるだろうか。
end.
(121017)
……あれ、なんでこんな危ない思考になったの高坂。
おかしいな、ほのぼのだったはずなのに…
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