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僕と鈴木くん3

クラスメイトは遠巻きに見ているだけだし、不良くんのファンの生徒からは睨まれてるし。
どうしたらこの状況を打破できるのか分からなくて、とにかく名前を言えばとりあえずはこの痛みからは解放されると思って口を開こうと少し身動ぎした、ら。

――、ガシャァーン!

と、凄まじい音が後ろから聞こえた。
余りに大きい音で身を竦ませると、転校生の手の力が緩み手首が放された。ぱっと手を引っ込めつつ後ろを振り返ると……

「………、」

ゆらりと立ち上がった鈴木くんが、ぽつりと何かを零した。
鈴木くんの机は前の椅子を巻き込み派手に倒れていて、すぐに音の原因だと気づく。
転校生は「なにしてんだ!」とか「こんなことしちゃいけないんだ!」云々言って喚いてるけど、そんなことよりも鈴木くんの様子が気になった。

「おい!なんとか言えよ!」
「お前みたいなゴミが宇野に触るな、穢れる」

声を掛けようとして、ぴたりと口を瞑る。
低すぎる声を飛ばし、鈴木くんが近づいてくる。ぎゃあぎゃあ言ってる転校生を放って見ていると、スルリと掴まれていた手首を取られ軽く引き寄せられた。

「……大丈夫か、宇野」
「う、うん……ありがと鈴木くん」

鈴木くん、思ったよりもだいぶ背が高い。たぶん180は軽く超えてる…。いつも席に座っていたから分からなかった。
そっと優しく手首に触れて、痣になったそれをなぞる。

「おいお前!そんな酷いこと言っちゃいけないんだぞ!あ、分かった!お前も何かトラウマがあるんだなっ?だからそんな暗い格好してるんだろう!」

そう捲くし立てた転校生に呆気に取られた。
最初に自分が「見た目で判断するな」と言ったくせに、自分は判断してるじゃないか。
矛盾していることにも気づかず、転校生は聞けよ!最低だ!と、鈴木くんにいきなり殴り掛かり……

「目障りだ」

それを意図も簡単に受け止められ、逆にその勢いを流されて床に倒れた。
初めて見る鈴木くんの一面に、ただ驚いているばかりの僕はこの後、更に驚くことになる。




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