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僕と鈴木くん2

そんな毎日が、ぐるりと反転したのは転校生が来てからだった。
突然Sクラスに編入した彼は、マリモのような頭と全く目の見えない瓶底眼鏡という格好をして「人を見た目で判断するな!」と啖呵を切ったつわもの。
正直それは無理じゃないかと思った。……そこで「鈴木くんは?」と思った皆さん、僕はとても心外です。
鈴木くんと転校生を一緒にしないでもらいたい。鈴木くんは確かに転校生と似たような格好をしているかもしれないけど、鈴木くんの髪はあんな飛び跳ねまくって痛みまくった明らかな鬘なんかじゃない、凄く綺麗なまさに塗れたような漆黒なんだよ。
全く目の見えない、指紋だらけの瓶底眼鏡と一緒にしないでほしい。鈴木くんの眼鏡は黒縁で、さり気なく粒の宝石が使われたオシャレな装飾がされてるんだから。うっすらと見える目はいつも柔らかなんだよ!

とまぁ、少し興奮してしまいました。すみません。
話を戻すけど、例え転校生が来ても関係ないと思ってた。Sクラスだけは校舎が別だから。誰々を侍らせているとか、生徒会の皆さんが転校生を好きになったとか。
そんな噂話を聞くだけで全く興味なかった。
でも、突然転校生がAクラスに来てから状況が一変したのだ。

「お前!名前なんてゆーんだ!?こんな本ばっか読んでるから暗いやつになっちゃうんだぞ!」

そう言って、手に持っていた文庫本を取られ床に投げられたのを見て呆然とした。
名前聞いてんだから答えろよ!と、怒鳴る転校生は僕の手首を掴み立たせた。

「俺が友達になってやる!だから早く名前教えろよ!」

頭が全然追いつかなくて、言葉も上手く出て来ない。
一体何がどうなって、この状況に?ただ静かに本を読んでいただけなのに、突然こうなったことに戸惑う。
本音を言えば、名前なんて教えたくない。こんな非常識な人間と関わりたくない。だけど掴まれる手首は痛みを訴えてきて、痺れ始めてる。
ぎゅっと眉間に皺を寄せて耐えていると、転校生の後ろにいたD組の有名な不良と呼ばれる人が睨んできて、泣きたくなった。




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