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春の花冠3

そう思ってから一週間が経った。
あれから社に戻り続きの仕事を済ましていると、部下がヘマをしたらしくそれの対応に追われた。この一週間自身の仕事とフォローで忙しく、花屋も見に行けずかなりのストレスが溜まる一方だ。
女達は勝手に群がってくるし、重役員の一人が娘をどうかとしつこく言ってくるしで交わす為の笑顔さえ浮かべていられない。

「黒染さーん、お昼行きませんかぁ?」

まさに忙殺、という言葉を表している営業課にきて、総務の女達が猫撫で声で絡み付いてくる。
ぶちりとどこかが切れた音がし、そのまま腕に触れようとする手を叩く。

「この状況をよく見てから言え」
「っな、……ひどい!」
「酷くて結構。仕事の邪魔だ、消えろ」

ぎゃあぎゃあ騒ぐ女達は、それでも懲りずに絡んできていい加減手が出そうだ。
周りにいた部下達がキラリと目を光らせ面白がり、それでも激怒しそうな俺を見て女達を部署から追い出していく。

「課長ー、いいんスか?仮面剥がれてますよー?」
「仮面も何も、俺は"最初から"何も言ってない。あんなの迷惑なだけだ」

部下達や騒動を聞きつけた人間達が見てくるなか、パンパンと手を叩き気持ちを切り替えさせる。各々に指示を出しつつパソコンを弄っていると、内線が鳴った。

『秘書課の中倉ですけど』
「ああ、どうも。どうしました?」
『黒染くん?ああ、良かった。緊急事態よ。君の猫ちゃんが逃げちゃうわ』
「…………どういうことですか」

ギシリと椅子を鳴らして天井を睨む。

『そんな怖い声出さないでよ、私のせいじゃないんだから。この間話した従姉妹の結婚式本当のことなのよ。で、やっぱりあそこに頼もうと思ったの。花が凄く綺麗だったから』

それで電話番号を調べ、一ヶ月後に取りに行くので予約がしたいと伝えたらしい。
話している最中専務の声が聞こえて、「ちょっと黙っててください!」と上司に向かって吼えていた。
だがそんな彼女の心配よりも、彼のことが気になり続きを促す。




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