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深夜のモンスター

――24時26分.

寝惚け眼で時計を見て、やっぱ早く寝すぎたかとちょっと後悔。
同室者は家の都合で実家に戻ってるし、買ったゲームもクリアしたしやることもないから早くベッドに入ったら、案の定中途半端に起きてしまった。
9時に寝たのは失敗だったなぁ……のど渇いた。

「あ、冷蔵庫なんもないんだった」

炭酸が飲みたい気分だったのに。
そう言えば同室者に「ちゃんと買い溜めしとくんだよ!」って言われてたんだった。
全部食堂と水道で済んでたからすっかり忘れてた……。
どうしても炭酸が飲みたいので仕方なく自販機に向かう。この階の自販機にあったっけかな。

「あ、あー……ミツヤでいいか」

ホントはファンタがよかったけど探すのめんどくさいし、しょうがない。
小銭を入れてボタンを押す。毎回思うけど、炭酸を落とすのってどうよ?思ってんの俺だけじゃないと思うんだけど。
自販機の前のソファー(流石金持ち学校って感じ)に座って、ぼーっと特に何を見てるわけでもないままミツヤを飲む。
こんな時間だし誰もいないから、静かでちょっと怖い。

「……ん、」

炭酸飲めた満足感からまた眠くなってきた。
このまま持ち帰るかと思ってると、近づく足音。珍しい。
ちらりとその方を見ると、俺よりもでかい奴が歩いてきた。ってかあの靴の色……三年じゃんか。なんでこんなとこに。ここ二年寮なのに。

「柿崎淳也(かきざき じゅんや)」
「……はい?」

よくよく見るとそれは我らが誇る(笑)生徒会長様で。
黙って成り行きを見守ってると、突然フルネームで呼ばれ思わず少し声が上擦った。

「trick or treat?」

そりゃもう、べらぼうに素晴らしい発音でした。一瞬聴き取れなかったほどに、ええ。
そう言えば会長のお父様はおフランスの方でしたね。フランス語じゃなくて良かったです本当に。その父親譲りと思われる素敵なお顔と柔らかな物腰はチワワな受達に大人気で、何もせずとも男女共に群がってくるとかで羨ましい限りですええ。本当にどうしてこうなった。会長頭でも打っ

「淳也、trick or treat?」

……たんですね、絶対。きっと鉄骨かなんかに打ち付けたんでしょう。いきなり名前呼びになってますよ!
唖然としたまま会長を見ていると、そのご尊顔を無表情にして黙り込んでしまった。
あれ、これもしかして罰ゲームとかじゃね?「何こいつ本気にしてんだきめぇ」とか思ってんのかも!そうだよ、じゃなきゃ会長ともあろう方がこんな平凡な、しかもパジャマのままの俺に言うわけないじゃん!





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