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夢であれ5

死にたいと思ったこともある。転校生の彼のせいで。
でも、それで死んでしまったら負けなような気がするし、死ぬ理由が彼だなんて正直嫌だ。
黙ったままでいると、男はまたくすくす笑った。

「私がお前を殺すはずないだろう?」
「……どうして?」
「お前が此処に入れたから」

楽しそうに笑う男に、首を傾げる。
俺は、彼に巻き込まれてこの世界にやってきたはず。現に、彼が神子だとあの煌びやかな服を着てた人が言ってた。ならここに入れるのはたぶん彼のはず。なのにただ巻き込まれた一般人の俺がここに(不可抗力だけど)入れたのは、……なんで?

「どういう、こと?」
「本当はお前だけが来るはずだった。だが、関係のない人間がお前の傍に居て尚且つお前に触れていただろう?だから、二人一緒に来てしまったのだ」

どちらが神子か分からないから二人を呼んだわけじゃなく、最初から俺だけだった?
……ということは、巻き込まれたのは本当は彼のほう……?

「お、れが……神子って、こと?」
「そうだ。王族の者が連れて行ったのはただの偽者。いや、偽者どころか何の力もないただの人間。お前が、私の唯一の神子だ」

ずっと、静かに笑ったままの男が俺の額に触れる。

「それでもまだ、死にたいか?」

見つめ合う視線に耐え切れず、スッと逸らす。
"私の"って言った。この人が神様ということ……だよね。
そうしてふるふると頭を横に振る。分からないことだらけだけど、ここの……この空間は何でかとても安心できるから。

「そうか、そうか」
「……たとえ殺されるとしても、あなたなら、いいよ」

彼でもなく、地球の人間にでもなく、騎士でもなく、王族といわれるさっきの男でもなく、――この、神々しい故にどこか狂気を含む男になら。
くすくす、くすくす。
ぽんぽんと後頭部を撫でられ、それに逆らわず男の胸に顔を埋める。
ギイィ……と音を立てて、扉が閉まった。



fin.

(121030)
全員名無しというね。さーせん!
私が夢で見た小話です。夢だから飛び飛びで、結構加筆と軌道修正しましたwwいつか続きを書きたいと思って、る。



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