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夢であれ

季節はずれの転校生は、可愛らしい顔をした生徒だった。
男子校ならではの閉鎖的な空間で、彼はその容姿と媚びない態度で次々と周りを華やかにしていた。
でも俺はそんな彼が、自分が正しいんだと信じ正義をかざす彼が苦手で。正義も度が過ぎればただ押し付けられているようにしか思えなくて。
だから俺は彼を避けていた。なのに、彼はそんな俺を許さなかった。
どこに行くにも俺を連れて行き、大事な友達だと言う。それが続けば、彼の周りが黙っているはずない。
地味な奴が近づくな、図々しいと何度言われたことか。
その日も屋上に呼び出され、散々嫌味を言われていたときだった。彼が突然、屋上に来たのだ。
フェンスを背に暴行を加えられていた俺は、「どうしてこんなことするの!?」と言う彼に少しだけほっとしたのを覚えてる。
だけど、それもそこまで。彼に好意を持つ人達が嘘を真とばかりに吹き込んだ。
俺が先に手を出してきた、だから正当防衛だ。この人数差を見て信じるほうがおかしい、そんな嘘を彼は簡単に信じた。
酷い、なんでそんなことしたの、友達だと思ってたのに。もう失笑しか出ないような言葉を吐いて、俺の服を掴み彼が泣く。

所詮彼は、そういう人間だ。
周りにいさせるのは美形だけ。みんな平等だなんてどの口が言うのか。

呆れるのも、怒るのも、泣きたくなるのも、もう疲れた。

ふっと、息を吐いた――――一瞬の間に。

「えっ、なにこれ!?」

俺と彼を真ん中に、丸い……漫画などでよく見る魔法陣のようなものが突然出た。
何故か彼に好意を持つ人達は魔法陣に入れないみたいで、外から蹴ったり殴ったりしてる。
慌てる彼が更に服を強く掴む。俺は動揺もするし、戸惑ってもいるけど。それよりも嫌な予感しかしなくて、呆然と魔法陣を見つめ続けた。


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