新しい能力を酷使した事が原因だったのか、はるなが目を覚ましたのはそれから3日経った後だった。
ズキズキと頭痛が響く音に歪んだ瞳をゆっくりと開け、開けた視界に映る綺麗な木目の天井。
船内だと揺れるベッドで気づいた時に、自分を見下す男達の視線がはるなの顔に刺さる。
まるで山のような大きなシルエットが影を彼女に落としていて、たまらず声をあげた。
「わひゃっ!?」
「わ、わるい……マルコ!エース!起きたぞ!」
「……!」
男……ジョズが声をあげるとすぐ後ろにいたマルコとエース、ほか何人かの面々が顔を揃えてほっと息をつく。
「はるな…!心配したんだぞ!いきなりぶっ倒れやがって!」
「あ……エースごめんね…その、白ひげさんは」
「それは後でいいから、体はどうだ?うちの船医の腕は確かだから問題ねえとは思うけど…」
「一言余計だよぃ、……はるなと言ったか?体を起こせるかぃ?」
「はい…」
そっと体を起こすと、マルコさんは丁寧に自分の体に触れて体温を確認する。はるなは世話をさせているという肩身の狭さから伺うように彼に聞いた。
「あの…すみません…倒れてしまったんですよね…どれくらい…」
「3日だぞ」
「そうですか……っ3日?!??!?!」
エースの一言にがばりと顔をあげると、マルコは大きなため息をついた。
「お前さんよっぽど派手に能力を使ったらしいよぃ、正直どうなるかおれたちにもわからなかったが、もう問題なさそうで何よりだ」
「すみません…島についたらすぐ降りますので……」
そうぺこりと頭を下げる様子を見て、思わずエースとマルコは目を合わせた。
申し訳そうな声でマルコが答える。
「それがな……お前寝てる間に島ついてログ溜まってでちまったよぃ」
「あっ………いえ、大丈夫です、出たのが昨日今日なら、小船でも頂けたら戻って」
はるなの慌てたような返事を聞きながらもエースは口を尖らせる、はるなの提案に不服を感じているようだった。
(船なんかカヌーすら乗ったことないけども…そんな事も言ってられないよね…はやく戻らなきゃいけないのに)

「いや、それについてなんだけどよ、島の病院にお前を預けるって手もあったんだけどちょっと考えてな」
「?」
「はるな、うちのオヤジがお呼びなんだ、きてくれるかぃ」

やけに真剣そうなマルコの言葉に、はるなは黙って頷くしかできなかった。











広大な海を見渡していた白ひげの側にははるなが居た時に立っていたナースたちは居なくなっていた。
途端に距離が近くなった事で競り上がる緊張をなんとか抑え、マルコの後に続き巨大な椅子の前に立つ。自分の身長では椅子に座った彼の膝にすら届かない距離で、まるで巨大な銅像に語りかけられてるような畏怖がのし掛かる。
「……はるなと言ったな、お前は医者なのか?」
「いえ、違いますその……悪魔の実の能力者で…」
「成程、それでおれの体の病気が分かったのか」
「いえ……私の能力は病気や怪我といったものと紐づいてるのではないのですが…すみません、自分でも詳しくはわからないんですが、能力が体の中に作用できると思ったので、…それで……少しでも良くなるんじゃないかって…」
「はるなおめえそんないい加減な経験でオヤジに能力を使ったのか!?」
そう言われた途端、はるなはスッと身体中が冷えるのを感じた。
そうだ、白ひげの容体はどうだ、もし私の仮説が間違っていれば、彼の血液や水分量が狂ってしまっていたら……!
「グララララ!!おれを実験体にするとはいい度胸じゃねえか!」
「あ、あの…すみません…私もしかしてとんでもないこと…!?」
「いや、その逆だよぃ、はるな」

隣に立っていたマルコが、ニッと目一杯の笑顔を彼女に向けた。

「ああ、お前の力は充分に見せてもらったぜ」
「あ…お力になれたなら…何よりです、それじゃあエースに送ってもらうのは…」
「ああ、その事はエースから聞いていたぜ…そこで考えたんだがな」

笑みを浮かべ笑っていた白ひげは、スッとその雄々しい視線を細めて持っていた

「お前は俺の娘になれ!」

……へ?
思わずはるなは顔を固まらせた。
「行き先も目的もフラフラしやがって、お前さては身寄りがねえな」
あっという間に嘘は見抜かれていたらしい、流石にこんな海域を旅しているなんて熟練の船乗りなら嘘だとわかるのだろうか、はるなは困ったように笑い、手を降った。
「あっ…アハハ…そんな、そう言って頂けて本当に光栄ですが海賊の娘なんてそんな」
「グラララ!おめぇの意見なんて聞いちゃいねえ!」
「へぇ!?」
「今日は娘誕生の祝いだ!宴の用意しろてめえら!!」
「おお!!」


ウッッッッッソでしょ!?




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