「じゃあな!!お前ごと鳴らしてやる!!!!」
「おのれ…雷迎≠…青海のサルどもが……!!……2億V雷神=I!!!!」

巨大な雷雲が消し去った先にいたエネルに向かって鐘を向けるルフィだったが、エネルは自らを雷へと変え迎え撃つ。
ルフィはすかさず蹴りを入れるが、背後に回ったトライデントに気づかず、はるなはとっさに腕を出してその巨大な槍の鋭い鋒を掴む。
「うっ……!」
「はるな!!!!」
「ホウ……串刺しにしようとしたが……ゴミの癖にまだ丈夫なものだ……」
「ルフィ……お願いっ…!!!」
鋭い刃を生身で掴んでせいで手のひらに食い込んでいく激痛に歯を食いしばりながら、左手でルフィの首に捕まりルフィの顔が見えないままにはるなは叫ぶ。ルフィがギン とエネルを睨んだのが、その表情が見えずともわかった。


「ゴムゴム≠フォ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!黄金回転銃=I!!!!!」





    ―――お前が再びジャヤに着いたら

    ──消えた我らをどう思うかな。

    もう少し待て、今伝えるから。

    おれ達はここにいる!!!

    シャンドラの灯をともせ!!!

 

    ―――そうだ。

    聖地は再び歌うのだ。

    …………いつかきっとな。

 
     ―――……私は偉大なる航路≠フ

    ジャヤという島で

    強大な黄金都市を見た

    黄金卿は存在する


    ―――黄金郷≠熈空島≠焉A

    過去誰一人無いと証明

    できた奴ァいねェ!!!

    それでこそロマン≠セ!!!

 

「届け〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!」




     
    ―――おっさん?

    聞こえるか?

   黄金郷≠ヘあったぞ!!!

 

     ―――400年間ずっと、

    黄金郷≠ヘ!!!

     空にあったんだ!!!!




その音色は、とても壮大で、美しく。島を超えた海の隅々まで響き渡っていく。
何度も、何度も音を重ねてはまるでルフィの叫びに呼応するかのように声をあげる。
鐘に打たれたエネルは気を失い遠くへと落ちていき、ルフィも真っ逆さまに落ちていくのをはるなは捕まえたまま雲をつくりそっとそこに下ろす、右手を見ると裂けた手のひらからは血がとめどなく溢れていくというのに、興奮したはるなはだんだんその痛みすら感じられなくなっていくようだった。


「鳴った」
「うん!」
「聞こえたかな……おっさん達に」
ルフィは荒い息のまま雲に寝そべり、はるなに問いかける。
「届いたよ…きっと……」

にしし、とルフィは楽しそうに笑う。
大の字になって、体力はもう限界なはずなのに、元気よく腕を伸ばす。
その姿を見て、はるなは瞼が熱くなっていくのを感じた。
ルフィのすぐそばで座り込む、ルフィの笑顔の、優しい眉が、ゆっくりと曲がっていく。

「……はるな?なんで泣いてんだ?」
「……あ……」

ぽろりと落ちた雫は、そのままはるなの頬を伝っていく。慌てて擦ろうとしても止まらない涙に、ルフィは不思議そうに寝転んだまま覗き込む、純粋な瞳に、はるなは思わず言葉をこぼした。

「……ルフィが……死ななくてよかったって…!!」
「なんだよそれ!死ぬもんか!!」

ルフィは怒ったように口を尖らせるが、はるなにとってはそんな当たり前すら、奇跡のように思えたのだ。
………なぜ、ナミさんの代わりをしようと思ったのだろう、助けようとでしゃばったのだろう。
それで未来が狂って…ルフィが死んでしまったらどうだ?
自分の目の前にいるキャラクターたちは、決められた運命を生きて、勝ち取り、未来へと突き進んでいると言うのに。
自分が触れてしまったことで、もし犠牲が出てしまったら!
はるなの脳裏に蘇るのは、手のひらの痛みが呼び覚ます。燃え盛る炎、突き刺さる拳。
息絶えながらも、ルフィに愛を伝えた……彼の姿。

どうして、何もできなかったのに、性懲りも無くこんなこと!!
「よかった…!!ルフィが…なにもっ…なにもなくてっ……!!」
ルフィはゆっくり起き上がると、いつまでも泣き止まないはるなの頬をつねる。
「ひっ……」
「泣くなよ!弱虫!!なんで俺が死ぬことばっかり考えてんだ!!!」
「だって……私っ……もし失敗してたら……あなたを殺してた……!!」
「でもうまくいったじゃねえか!!」
「っ……!!」

両手で顔を覆い、泣きじゃくるはるなにルフィは絵に描いたように狼狽えた。
うー、や、もー、と声を吐き出しながら、意を決したようにはるなの体を抱き上げ、持ち上げる。

「わっ!!!」
「知らねえ!いいからみんな待ってんだ!!!下に降りるぞ!!!」
「う……うん……」

はるなは気を集中させて、雲を降下させていく。自分とあまり変わらない体に抱きしめられていると言うのに、どうしてこんなに広く感じるのだろう。はるながすんと鼻を啜るとルフィがはるなを抱き上げたまま目を見つめて話す。

「お前がいなきゃ勝てなかったんだ!だから!!笑えよ!!!」
「………うんっ……」

澄み渡った青の空の下で、はるなはしっかり頷いた。
眩しいほどの笑顔が綺麗で、目を凝らす。
……自分の全てを、絶対に肯定してくれるこの人の側にいると、いろんな人が変わっていってしまうのがよくわかる。
やわらかな風に迎えられながら、はるなは瞳を閉じて思った。


………ああそうだ、きっと私……ルフィの仲間になりたいんだ……。



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