“神の島”サバイバル―――
脱落者 1名
残り81名―――



「とりあえず……え…と、記憶ではこのあとゾロやロビンたちは黄金郷でエネルと対峙…ルフィが大蛇の胃の中で…いつ出てくるんだっけ…?ナミは小さい女の子といたような、でも確かエネルに連れてかれちゃうし…ナミの側にいってあげるべき…?あーー思い出せ空島編!!」
わんわん……と、はるなは唸りながら森の中を進んでいく。
勿論、うっかり蛇などを踏んでしまわないように、木の根につまづいて派手に転ばないように足元へ注意をはらい一歩一歩コソコソ歩いてはいるが、方向が合っているという自信もないせいではるなは歩きながらも大きなため息をこぼす。
そうして俯いている彼女の頭に大きな風音が吹き上げる、突風のような音と同時に木が削れるような鋭い音に視線を向けた時、鬼のような眼光がまっすぐとはるなを見下ろしていた。
体に纏う血すらもが、恐怖を煽る刺青のようにドス黒く体を染めている。
「……てめェ……」
ワイパーだーーーーーーー?!??!
わーーーーコワイ!!!!!!
ガシャリと一度巨大な銃を構えられビクンと跳ね頭を抑えてると、ワイパーは舌打ちを漏らし立っていた高い木を蹴り上げはるなの目の前に下りてくる。武器を使う負荷を考慮したのか拳を握りシャツの胸元を掴み上げた。目の前にこられたせいで随分と差のある身長の分、はるなは余計首ごと青筋を立てている彼を見上げることになった。
「まだいやがったのか青界人め……」
「あ……わ、わたし……仲間を探してて…」
「ここをただの森だとでも思ってんのか?」
「っ……うぁっ!」
ワイパーははるなの体を掴んでいた腕ごと引き寄せ、つま先が浮きそうになる体を大木に押し付けた。胸元に込められた力に息が苦しくなりそうにながらはるながワイパーを見つめると、彼は加えていたタバコを噛み切りそうなほどに歯をぎらりと擦り合わせる。
「ここの土地はてめぇらみてぇな賊に渡せるようなモンじゃねぇ、大人しく帰れないならここで排除してやる……」
はるなは左手を構えたワイパーに思わず両手で腕を掴み、声を漏らす。
「……土地をっ…奪うつもりなんて…ありませんっ……!」
「あ?なら黄金か?」
怒っている、だって、信じているんだ。
この人は信じているから、怒ってるんだ。
はるなは記憶の中で確かに響いている、あの偉大な、勇敢な、誰よりも友人思いの戦士の大きな背中を思い出す。
「………黄金を信じちゃ、ダメですか?」
ワイパーは咄嗟に、顰めていた顔が解け、目を見開いた。
はるなは自分の胸元を掴み上げる腕を両手で握り締めながら叫んだ。
「カルガラの故郷には大きな黄金があって!!ノーランドは絶対にそこに行ったって言葉を信じて……っ青界の私たちが二人の約束を確かめに来ては、ダメなんですかっ……?!」
ダメだ、恐怖にはきっと耐えられると思ったのに、はるなの瞳には涙が浮かんでいた。
絶対、絶対叶えなきゃいけない、私の使命。
しばらく返事のないワイパーは、ゆっくりと腕をおろすとはるなを地面へと下ろした。安堵感も乗じてぽろぽろとでてくる涙を拭っていると、ワイパーは俯いていた口をゆっくりと開いた。……あいも変わらず、鬼のような低い声で。
「……泣くな」
「え……?「泣くんじゃねえ!!!」
「わあぁっ!?だって、そんな怖い顔されたら涙くらいでます!」
木の幹に背中を押しつけ少しでも距離を取ろうとしたのに、ワイパーは一歩踏み出して、片手で大木に手を添えると、はるなを体で覆い…まるで檻の中へ入れるかのように閉じ込める。全身で自分に影を落とす男をはるなが見上げると、想像とはまるで違う…寂しそうな、どこか、なにかを堪えているかのような辛そうな顔だった。はるなが呆然とその顔を見上げているとワイパーははるなに目を合わせてやっと言葉を出した。
「……鐘は必ず鳴らす」
木についていた手はゆっくりと、はるなの頭の上に落ちる。はるなはえ?と突然の態度に思わず体を硬らせた。
あれ………あれ?
「そうか、……悪かった、お前は約束を果たすために、ここへ来たんだな」
なんか、ヤナヨカン
「お前を、……お前の存在を、俺の一族はどれほど待ってたことか……」
もしかして
「こい」
ワイパーは黙り込んだはるなの了承を得ることもなく、なんなく片腕ではるなを抱えあげた。
「必ず俺がエネルをとる」
これ、やっぱり……やっぱり
「俺たちの宝を取り返すぞ」
私がノーランドの一族だと思われてるーーーーー!?!? !?



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