「さてとっ 地図を見て!『探索組』のルートはこうね、南へまっすぐ、この右目≠ノ何らかの遺跡があるハズだから、まァ、敵もろもろに気をつけて黄金持って来て!!」
ナミはそう言いながらペンで遺跡をの位置するはずの南を指した。
地図を囲みながらウソップは敵という言葉に露骨に嫌な顔を浮かべる。
「簡単に言いやがって…」
「何だお前、黄金黄金言ってるくせに来ねェのか?」
「そうよ、だってコワイじゃない」
 ルフィの不思議そうな顔にナミは当然といった面持ちで伝えるが、チョッパーは思わず大きく口をあけてはるなに顔を向けて小さな声で囁く。
(黄金は手に入れいけど危険は冒さねえんだ!変態だっ!!)
(というより危機管理能力がスゴイと言うか…)
「なに? はるな、チョッパーなんかいった?」
ぶるぶるぶるぶる
2人は反射的に首を降った。


「その間、私達はメリー号でこの島を抜けるわ。こっちも危険だけど、なるべく早く遺跡付近の海岸へ行くからそこで落ち合いましょう! そしてそのまま空島脱出、これで私達は『大金持ち海賊団』よ!!好きな物買い放題!!」
「やった〜〜〜!!!」
「いいんでしょうか、そんなノリで…!?」
「見ろはるな、今日は快晴だ」
ゾロは刀を空に向けるが、ここは空島なのでもちろん澄み渡った青空が広がっている。はるなはこっくりと頷いてゾロの満足げな顔を見つめた。
「雲ひとつない…雲の上だね」
そこではるなはこの後のことを思い出した、ナミたちはエネルに遭遇し、戦いになればサンジたちは大敗したはずだ。
あの場にいるよりもこれから”はぐれる”ルフィたちについていたほうが…正史に触れずにすむのではないだろうか。
(ゾロかロビンさんと一緒にいれば…戦闘のフォローくらいはできるはず…)
自分の力を考えればサバイバルチームとの行動は危険ではあるが…戦えないという立場になるわけにもいかない、出るべきだ。はるなは意を決して荷物を背負ったルフィの前に手をあげる。
「私っ…遺跡興味があるので探索チームにいきます!」
「ええっ!?でもそっちには…」
思わずナミが焦った様に首を振るが、はるなはすぐゾロの横へ立ち意気揚々と彼の手を取る。
「ゾロさんいますし!ねっ!ねっ……?」
伺う様に急に見つめてくる視線をうけて、ゾロは探索自体には興味があったのか、刀を片手にかけるような仕草をして笑みを浮かべた。
「いい度胸じゃねえか、こいよ」
「はるなちゃん〜〜!!!俺が守ってあげるからこっちに……」
「はるなもおれたちと冒険で決定だなっ!!!!!」
ルフィはサンジの言葉を遮り、我慢できないという様に颯爽と指を森へ向け意気揚々と歩き出した。
「おーし!! そんじゃ行くかァ!!!」
「おお!!!」
 




「おい!!どこ行くんだゾロ!!!そっちは逆だ!!"西"はこっちだ!!!…まったく! お前の方向音痴にはホトホト呆れるなァ」
「おいルフィ、お前はなんでそう人の話を聞いてねぇんだ、"ドクロの右目"なんだから右だろうが!!!あっちだ!!バカかてめェっ!!」
…もちろん、ここまでは一緒に行動していたはるなはこの一部始終を見ていたため、真っ直ぐあるいていたはずのチョッパー、ロビンの前を先導したがる2人が急に曲りだしてお互い左右に別れていくという奇天烈な行動をぜんぶ追っていたため、改めてこの異常な方向音痴の恐ろしさに触れるのだった。

「……はるな、船医さん、私たちが向かっているのは"南"で方向はこっちだと伝えてきてくれる?」
「よしきた」
「…はい」
チョッパーがゾロの刀をひっぱって必死にロビンたちの方へ戻そうとするのを片目に、はるなはルフィの腕を掴みあげた。
「ルフィ…南はこっちだって…!」
「なにィ!? じゃあこっちは…西か!!!!」
「東だね!」
「んン〜〜〜???難しいぞォ…」
ルフィは少し困った子供の様に目線をぐるぐる回して森を見渡している。はるなはふ木の根元に転がる長い枝を見つけると、拾い上げルフィに手渡す。
(ふといなくなられたら大変だ…)
「これ持ってて!」
「おお!いい棒だなこりゃ!!ありがとう!!!」
合流するとチョッパーも羨ましがるところに、少年らしさが垣間見れて微笑ましくもあった。ルフィは愉快そうに木の枝を振り回して木々を叩きながら歩みを進める。これで急に方向転換をされても音で気づけるという策だ。
「はるな〜〜〜おれも棒ほしい!」
「そ、そんなに!?」
「いいな〜〜〜…」
チョッパーは悔しそうに歩きながら、広大な大地を見て得意げに話し出した。
「でもおれはこの森、もっとコワイとこかと思ったんだけどなーんだたいしたことねぇな〜〜〜がはは」
「へぇ〜〜チョッパーお前今日は強気なのか」
「そうなんだ、がはは」
もちろんそれがゾロ、ルフィ、ロビンの三人が揃っているからだということははるなにもはっきりと理解できた。
実際こんな怪しい森だとしても、はるな自身そこまで恐怖を感じていないのだ。
(まあ…でもすぐにバラバラになってしまうのだけど、チョッパーの強気なフラグが回収されてしまう…)
「だが確かに拍子抜けだよなァ、昨日おれ達が森へ入った時も別に何も無かったぜ。神官の1人とも出会わずじまい」
「いいことなんじゃないの…?それって…」
「あっ……だ、だよなはるな!会わない方がいいよな!?」
「いいと思う…!すごく…!!」
「はっ、いずれ会うんだタイミングなんて早い方がいいだろう」
「「遅い方がいい!!!!」」
「どっちなんだよチョッパーは……」
まさかチョッパーとこんな息があってしまうなんて、お互いにメリー号での戦いがあるトラウマのせいだろう。チョッパーはそれを思ってかはるなを見つめてはわかるぞ!という視線を送っている。

「おかしな人達ね、そんなにアクシデント起こって欲しいの?」
そういうロビンさんも声色はどこか楽しそうだった。
「……ん、なんの音?」
ロビンが声をかけあたりを見回した時には、すでにルフィもゾロも、おそらく匂いからチョッパーも警戒し始めていた。はるなはすぐにその存在を先に思い出し、真っ先に木の影に隠れようと走り出す。ルフィが陽気に声をあげた目の前には、木の幹を掻い潜り、森の中から巨大な顔をのぞかせまるで太古の生物かの様な神秘さでこちらをみつめる────巨大な蛇が姿を表したのだ。

「逃げろ──────!!!大蛇だ〜〜〜!!!」

「ギャ────!!!!」
「なんて大きさ、これも空島の環境のせいかしら。」
「でた────!!」
「ナマズみてぇな奴だな…ブッた斬ってやる…!」

ジュラララララ!!!
地を這い優雅と言えるほどスムーズに体をねじりあっと今に間を詰めてくるウワバミに、全員は散り散りに走り空を蹴る。こちらに目掛け大口を開け丸呑みにせんと突き進む巨体を木の影で気づかれない様に────
「はるなどこだ!?!?喰われたか?!?!?」
「ルフィッ……!!!」
はるなはウワバミに気付かれぬ様になんとか避けながら姿を追わんとするが、巨大なウワバミの影のせいで逃げ回る面々の姿を確認することも叶わなかった。そしてその上、噛み付いた先が溶け出す毒牙の威力を思い知る。
「毒………!!!」
「こりゃ逃げた方が…良さそうだな…」
「確かに」
「コエ〜〜〜!!!」

ジュラララララ!!!

………………………………

………………

…………

………

……


「……どうしよう」

わかっては、わかってはいた、が……

「そりゃあ…ひとり走って逃げた私が悪いよね、最初からロビンさんを追いかける形で逃げていればまだ…」

あたりには声も聞こえない。ウワバミは誰かを追いかけて遠くへと進んで行ったきり帰ってこない。完全にサバイバルコースまっしぐら。
(……よく考えたら私、ロビンさんたちのいる正しいコースにも戻れないんだ、だって漫画でしかみてない地形をさっき全然確かめずに逃げ回っちゃった…なんで自分はコースに正しく戻れると思ったんだろう…!!!ばかばか!!!)
はるなはひとり取り残された森の中で、泣く元気もなくがっくりと項垂れるしかできなかった。


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