あーあーどうしてこうファンタジーものは空から落下が鉄板になっているんですかねえ!!私能力手に入れたけれども基礎体力は並戦闘能力は並以下知識はかの暗躍機関諜報部員指令長官さまより遙か下のほんとーーーに!!!
まだ!!!
ぜんぜん!!!!!

弱いんですからね!!!!????


はるなは海すらも見えないはるか一面の大空の中で、まるで蟻が海を泳ぐように小さな足掻きを続けながら、その弧を描く腕で風を切り裂き息すらも難しい天空を真っ直ぐ落ちていた。
太平洋でもお目にかかれないであろう島一つない見渡す限りの海。
そしてただでさえ垂直落下によりぐんぐんとはるなの速度は上がっていく。視界などまともに開けてはおらず、何も見えやしない。
この世界でなくても引力と空気抵抗と摩擦ともろもろの物理ならなんとなく理解できるはるなには、能力か何かで海との激突の衝撃を避けなければ死ぬのは分かり切っている。
しかし海に落ちた途端能力は無くなるだろう。
つまり海に落ちることさえ許されないのだ。
今の自分の能力で、空中を移動することが可能か?
答えは、否。



「〜〜〜〜〜ッッッ!!!!!」
(ぁ゙ぁ゙あ゙ぁ゙ああぁ〜〜〜〜〜!!!!)


耳鳴りのする空中に口すら開けられず心中混乱状態で叫びながら、擦れる風に視界が霞んだ、
意識が飛びそうになる、その時。




「─────なんだアレ!!!????」
「人!!!???」


そう、
はるなは確かに声を聞いた。
大声だ、自分に向かっている。けれどここは高度何千という、はるか上空のはずだ、人がいるわけがない。
(ああ、三度目の正直は通用しませんでしたってやつか、ちがうか〜)
まっすぐ逆さになり落ちていくことで、はるなは自分の真下にある船の存在には気付くことができなかった、目を閉じる。体が寒くて言うことを聞かない。


(まいったな)





せめてもう少しいいところからロードさせてください神様、
はるなが意識を手放す刹那、



「ゴムゴムの──────風船ッッ!!!!!!!!!!」






やけに聞き慣れた明るい声が、はるなの頭上で大きく弾けた。









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