Dramatic...20






ルフィに抱えられるままついた城の前には、先ほど宴に参加していた女性が入り口の所でふらふらと慌ただしく歩き回っていた、彼女はニョン婆を見るや険しい顔で走り寄り、ルフィに下ろされた私とルフィは釣られて彼女の方へ視線を向けるも、彼女は二人など目にも留めずにニョン婆の前で立ち尽くす。

「ニョン婆様!」
「どうしたエニシダ慌てて……」
ニョン婆の言葉も待たず、彼女は続ける。
「よかった!今ちょうどニョン婆を呼びに行こうと」
「ん?何があった」
「それが……蛇姫様かま原因不明の病で倒れてしまわれて!!」

その言葉にニョン婆とルフィは顔を見合わせた。
「ええ〜〜〜!!?!今!?!」

よりにもよって、なんて心境が口からでているのも、突っ込める状況じゃなかった。

部屋へ通されると大きな女帝専用のベッドの上で苦しそうに胸を押さえながら荒く呼吸を続けるハンコックがいた。まわりにいる側近と、医師らしき女性が辛辣な面もちでニョン婆へと顔を向ける。
「姉様しっかり……!」
「姉様……!!」
妹たちが心配そうに寝そべる彼女の表情を見つめ続け、ニョン婆は息を吐くとルフィへと振り返った。
「おぬし少々外に出ておれ……!」
「ああ、でもおれ急いでん…」
「わかっとる!」

追い出すようにルフィを部屋の外へ出すと、ニョン婆はゆっくりハンコックの元へと歩み寄った。何度も揺れる胸が呼吸の異常さをさまざま見せている、顔色は青白く生気を吸われたようで、これは重病だと思われてもしょうがないほどだった。

「ハァ……苦しい……!」

ハンコックの絞り出すような声に、医師の女性が苦々しそうに言った。

「胸をずっと押さえているから心臓に異常があるのかと……!でも、わからない……見たこともない症状……どんな薬を処方していいのか……!」
「蛇姫様とても辛そう……!」
「お食事も一切取って下さらず」
「………」

ニョン婆は少し考え……はるなのほうをちらと見た、何を思ってはるなを見たのかはるな自身咄嗟とのことで判りかねたが、おもむろに小さく呟く。

「出航……」

単語を聞いたとたん、ハンコックはさらに苦しそうに胸を抑えた
「うぅッ……!」
「ハ、ハンコック様!?」
「明日の朝」
「はぅっ……!!」

続いたニョン婆の言葉にもびくりと恐ろしげに肩を震わせて、ニョン婆は肩をすくめ苦汁を啜るかのように顔を手で覆った。

「そうか……!ああなんという事……何とも場をわきまえぬ”ウイルス“め……!!」
「え!?ウイルス!?」
「何か心あたりでも……!?」
「ニョ……ニョン婆苦しい……わらわ………ハァ………死ぬのか…………………!?!」

ハンコックはつらそうな瞳をなんとかニョン婆へと向けて、ぽつりぽつりと弱々しく言葉を紡ぐ。ニョン婆はその様子をじっと見つめながら、険しい表情を崩さず言った。

「………ああ……死ぬ………………」
「!?」
「な……なんて事を!バカな冗談はやめてニョン婆!!!」

周りのざわめきもニョン婆とハンコック、はるなにはまるで聞こえなかった。原因が判明したとなれば、残された道は一つしかない。ニョン婆はハンコックの顔を伺うように見つめながら、はっきりと告げる。

「蛇姫や……わしとともにモンキー・D・ルフィがきておる」
(わたしもいます…!)

はるなは不意にそう思ったけれど、大人しく黙りこんだまま成り行きを見つめることにした。
「頼みがあるようで話だけ聞いてやってくれるか?」
「ちょっとニョン婆!姉様がこんな状態の時に!」
ルフィへの警戒がとかれたとはいえ、ハンコックの異常に付き合わせるわけにはいかないと周りは混乱したが、ハンコックは少し思いつめた瞳でゆっくりとベッドから下り、服を整えだした。
「構わぬ聞こう……そなた達部屋の外へ」
「え!?立った…」
すたすたと先程と変わって平静な面もちを取り戻したハンコックに少し安心したのも束の間、ルフィのいる外へと向かうハンコックを止めようとマリーゴールドが一歩踏み出たが、それはニョン婆に止められ、はるな含めその場にいた全員が、大人しく外に出たハンコックの後ろ姿を見守ることとなった。

召集の内容を海軍中将から伝えられていたハンコックは、ルフィのたどたどしい要望だけで事の大凡を理解したようで、黙ったままそのお願いを聞いていた。静かに口を閉ざすハンコックの様子を一々気にとめる余裕もなく、ルフィは必死に願いを言う。大きな声は部屋の外にいたわたしたちすべての耳にまでしっかりと届いた。
「お前!海軍の迎えの船に乗っておれをエースのいる監獄へ送ってくれねェか!!!」
命令じみた物言いはルフィの性分なのだが、そんな事関係ないだろう。妹たちはルフィの病気のハンコックを心配する様子すら見せず叫ぶ声を聞くや、ずかずかと部屋の中へ押し入り窓を開けて下で話していたハンコックとルフィに向かって叫ぶ。
「何を身勝手なことを!麦わらのルフィ!そなた姉様の心のキズを知ってなお忌まわしき土地へ行けというの!?なんてひどい男!!」
「情けをかければつけあがってこれだから男は!!!!!」
「もー姉様の堪忍袋も限界よ!石にしてそこから突き落としてやって!!」
「やっちゃえ姉様!!」

姉を思う気持ちに抑えが効かず喚く大声を聞いていながら、ハンコックは静かにルフィの言葉に返事をした。


「”七武海“の召集に……応じろと言うのね……そなたがそれを望むのなら……、
わらわはどこへでもゆきます」


ルフィとはるな以外には、想像することすら出来なかった状況なのだろう。

「よかった!ありがとう!!!これで処刑日前に間に合うぞ!」
「へ……!!!」
驚いたまま三人はひきつった表情を固め、先程より大きな声で叫んだ。


「蛇姫様が中枢へ行くことを決意した!!!」
「どういう事!?ニョン婆!!!!」


「蛇姫の病は……“恋煩い”!!!先代達の死因は“恋い焦が死に”!!!!東の海にはこんな諺があるという………




”恋はいつでもハリケーン“!!!!!!!」













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