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日中の日差しの強さも影を潜めた夕方。来客の予定はもう無いからと、いつもの流し着を身に纏い緩く団扇を自身に扇いでいると何度かドアがノックされる音が理事長室に響いた。

「フェレス卿、なまえです」
「ああ!なまえですか!どうぞお入りになって下さい」

私の返事を聞いて入って来たなまえは私の格好を見るなり恨みがましい表情を浮かべて「任務の報告書です」と言って机に幾つかの書類を置く。私が風通りの良い、涼しい格好をしていることを羨んでいるのは明白だった。その証拠に彼女の服装は祓魔師になった者だけが着ることを許される、教団から支給される制服だ。見た目からして暑苦しさが伝わってくる。「ご苦労様です」と気持ちを込めて団扇の風を彼女に送ってやりながら書類を手に取り軽く目を通した。

「今日は暑かったですね」
「らしいですね。報告に来る方々が一様にそう申してました」
「フェレス卿はずっと此処に?」
「ええ。こんな暑い日の中出歩くのは趣味ではないのでね」
「…私だって好き好んでクソ暑い中出歩いた訳じゃないです…それよりも何でクーラーついてないんですか。期待してたのに…」
「節約です」
「成金が節約とか意味が分かりません」
「何事も地球に優しく、ですよ…報告書に不備はないようですね。炎天下の中ご苦労様でした☆」
「…よっしゃー…」

なまえは力の抜けた表情で笑いながら、軽く手でこめかみを押さえた。

「どうかされました?」
「元々暑いの慣れてないんで暑さにやられたんすかね…ただの頭痛です」
「おや、それは大変ですね」

座り心地のよい椅子から立ち上がり、少しぼんやりしているなまえをソファーの方に連れて行く。横になって下さいと言えば彼女は素直にソファーへと寝転んだ。頬に手をやると中々熱く、相当暑さに参っているようである。

「あっつ…何かアイスないですか」
「アイスですか。アイスなら全部アマイモンが食べていっちゃいましたね。残念でした☆」
「アマイモン爆発しろ…」

なまえは暑い暑いと言いながら着ていた制服をゆっくり脱いでいく。頬は少し赤らんでいて、汗が滴っていた。彼女を異性として意識したことはなかったが、これは男としての悲しい性か、情事中のそれを連想させるには事足りるものであった。私は無意識に制服に手を伸ばして彼女がそれを脱ぎ去る行為を手伝う。ああ、何故だかこれから情事を始めるのだと錯覚してしまいそうだ。
脱がした制服を静かに床に置いて、そのままゆっくり手をなまえの首筋に持っていく。体温の低すぎる私の手はなまえに効いたようで「ひぃっ」と何とも色気のない声が理事長室に響いた。

「フェレス卿体温低すぎじゃないですか…」
「でも冷たくて気持ち良いでしょう」
「えぇまあ」