pkmn | ナノ
「はあぁぁ、今日も雨か…ったく、ゴールデンウイークだってのにこんなんじゃ気が滅入るっつーの…」
「折角の連休なのにね…友達も予定崩れたーって愚痴のメール着てたよ」
「…別によくね?この連休をフルに使って計画立ててたリア充共がこの土砂降りな空を見て悔しがる顔を想像する。それだけで俺はゴールデンウイークを満喫している気分になれる。いやーこのままざんざん降りで終わんねーかな、連休」
「うわっ最悪だ…」

思わず口に出すと、真昼間でもお構いなしにスウェット姿を決め込んでいるデンジは私を見てハッと見下すように笑った。いや、実際に見下されてるんだけど。相変わらず人の癇に障ることしか出来ないのかこいつ…出来ないんだろうな。
ブースターの毛並みを整えていたオーバは白い目でダメ人間と化したデンジへと目をやると深く溜息をついた。

「そんなにリア充を目の敵にするならお前も適当に女の一人や二人見繕ってリア充の仲間になれよ」
「そうそう、言っちゃあれだけどデンジの顔ならホイホイ女の子釣れるだろうしね」
「ダメだ」
「なんでだ」
「俺なら苦労せずとも女をゲット出来るだろう」
「はぁ」
「まぁそうだろうな」
「その彼女が実はヤンデレで、もし刺されたらどうするんだ」
「…………」

出た!アニメ悩!(説明しよう!アニメ悩とはアニメの見すぎで二次元と現実の区別がつかなくなることである!)
常日頃引きこもりを繰り返しては昼夜関係なくアニメ鑑賞(もしくはギャルゲー)を行っているとこうなってしまうんだろうか。私もサザエさんとかコナン君だけは毎週欠かさず見てるからな…気をつけよう…。

「おまっ…アニメの見すぎだろ…流石の俺でもそれは引くわ」
「うるっせーな…あー、ほんとリア充まじ爆発。VIPにカップル板のコピペ貼る奴死ねよ…」
「はいはいお前去年も同じこと言ってたよな。なまえ、これありがとな」

デンジの恨み言を軽く流したオーバは私にブラシを返し、大きく伸びをしてから「そういや、」と口を開いた。

「去年もこんな感じだったな…」
「ちなみに言うとオーバにまだ彼女がいて旅行でいなかった一昨年もこんな感じだった」

まじかよ…なんて言いながら、だらけモードを持続させている彼を見てオーバは本日二度目の溜息をつく。学習能力のなさに呆れているのは私も同じだけど。
顔も申し分ないくらい整って、その上シンオウ最強のジムリーダーなら女の子も放っておくわけないのに。やっぱり趣味がいけないんだろうか。
溜息をつかれたことにデンジは言葉にならない声を小さくあげながらだらりと床にゆっくり倒れ込む。

「彼女は欲しいが干渉されまくるのは嫌なんだ。俺によってくるのは干渉したがる奴ばっかりで嫌になる。あーなんかこう…ヒナタみたいな優しくて可愛くて火の意志持っちゃってる系女子っていねーかな?」
「知らねーよ。そういう子探せばいいじゃん」
「探す暇があるならアニメ見てぇ」
「いっそ出会い系にでも登録しろ」
「何だかなぁ…ぶっちゃけ言うと女と数日過ごすよりお前ら二人とだらける方が楽なんだよな…」
「………」

先程までリア充爆発だなんだと言っていた奴の発言とは思えない言葉に私とオーバは思わず顔を見合わせた。ぽろりと何気なく零された本音に段々顔がにやけてくるのが分かる。それはオーバも同じなようで、転がっているデンジの方を見て、手間のかかるような弟でも見るかのような、そんな優しい視線を送った。


「…なぁデンジー、Wiiどこにやった?マリカやろうぜマリカ。マリカやりたくなった」
「あー…そっちの棚にしまってある」
「私キノピオで」
「あ、俺ヨッシーな」
「え、俺もヨッシーがいい」
「黙れアフロ。てめーはドンキーでも使ってろ」


……何だかんだいって私達も結構リアル充実してると思うんだけどね


連休に纏わる気怠さについて