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「ね、なまえさん、もっと、」

もっとください。
その声にはっとして、まじまじと目の前の子どもを見た。白い頬に微かな朱色が染まりだし、瞳がもの欲しそうに潤い出す頃、私はこの場から逃げ出したいと実際には行動には起こさないことを少し途方に暮れながらいつも思ってしまうのだ。
心の中いっぱいに罪悪感が広まる反面、この目の前の子どもに触れてやりたいという矛盾した気持ちが押し勝ち、頬に触れ、優しく撫でる。
想像していたことと違うことをされたのかコウキくんは少し残念そうな、何だか物足りないような、子どもらしからぬ表情を浮かべた。ふとした時にコウキくんは本当にただの十一の子供なんだろうかと思う時がある。やけに大人びていて常に落ち着いている為かそこらにいる派手な身なりをして馬鹿なことしかしない大人よりかはずっと大人だ。比べることすらおこがましい位に。だからコウキくんを見てると妙に頬が熱くなるし、動悸もいつもより激しくなってしまう。コウキくんはそういう人だ。誰よりも大人で、それで子供な人なのだ。


「…なまえさんはいつもそうだ。自分から触れるくせに、僕がねだったらなまえさんは聞かないフリをする」


大人はいつだって狡いです。
撫でていた手を強く捕まれ、指の先を赤々しい舌でべろりと舐められると背筋がぞくぞくと何かが走った。熱がじわりと顔に集まってくるような感覚が神経を逆なで、くらくらと目が回る。思わず目を閉じれば子どもなのか大人なのか分からない人間が、私の指を生温かさを感じるそれで濡らしている。暴れさえすれば体はまだまだ子どもなのだから上手く抵抗することが出来るのに、何もせずただただ子どもの愛撫に耐える私はなんて滑稽なんだろう。


「コウキ、くん、ちょっと、」
「僕はなまえさんが好きです。なまえさんも僕が好きなんでしょう。ならそれでいいじゃないですか。ねぇ、何をそんなに拒むんですか。どうせ僕が何度尋ねても黙るんでしょう?」


指から口を離して首に唇を微かに触れ合わせながら、段々と上にのぼりゆき、コウキくんは自分の唇と私のそれが触れ合うギリギリにしながら一瞬呼吸を置いた。コウキくんの吐く息が首筋にかかり、無意識に体がびくりと震える。彼は少年の皮を被った、色欲に飢えた何か別の生き物なのではないかと有り得はしないことをふと思った。

「ずるい大人なんて大嫌いです」
「嫌ならもう家になんて来なければいい」
「…なまえさん、だからね、僕はそういうところがずるいって言ってるんです」

僕は貴女がいないと死んじゃう位に依存してるのに。
彼は耳元で静かに囁くと、舌を口内に挿し入れた。それは中毒になりそうなくらい甘美な味がしたのだ。


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