羊飼いの憂鬱-Memo | ナノ

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「あ、おはようございます」
「今日も早いな、英雄王」
「………売り出しは何時からだ」
「(髪の毛ぼっさだ…)えーと、八時半からですね。あと三十分…」
「我も行く」
「は?…いやいやいや…人混み凄いだろうからいいですよ(あれこれ勝手に単独行動しだすから絶対はぐれるだろうし)」
「そうだ英雄王。お前はいつも通りグータラしながらゲームでもしていろ。主の付き添い兼荷物持ちは俺の役目だ」
「え、オディナさんも待機でいいです」
「えっ」
「(あんな人混みじゃ幾ら魔貌封じてるって言ってもオディナさんのことだから揉みくちゃになるだろ…)私一人で行くんで、何か食べたい物があればリストアップしてくだされば買って──へぶっ」
「ふざけるのも大概にしろ。貴様一人では買える酒も買えぬではないか。それに、貴様一人で行かせてはケチケチして安い物しか買わぬからな。我が行って選ぶ」
「どうせお高いもの買うんでしょ。お金ないです」
「…年末年始だ。今日くらい出してやらぬこともない」
「………本当ですか」
「うむ。栗きんとんと茶碗蒸しは作れよ」
「了解です。あの……トロとか買ってもいいですか?」
「はっ、そんなもの…何貫でも買うがよい!」
「本当ですか」
「だから本当だと言ってるだろうが」
「やった…前からマグロのお寿司の詰め合わせで美味しそうだなって思ったやつすごく高くてですね…」
「幾らだ」
「九貫で確か三千近くでした」
「かっすいではないか。貴様の目では美味い物は買えそうにない。我が行く。反論は聞かんぞ」
「ギルガメッシュさんがいないとダメみたいなので是非ともお供としてお連れください」
「ふはははは!貴様も金の力には勝てんか!いいぞ、赦す!」


「………くっ…俺も黄金律のスキルさえ所持していれば…!」
「雑種…貴様は所詮貧乏サーヴァントなのだ。家政婦は家で雑巾がけでもしているのだな!」
「英雄王ぉおお…!」
「オディナさん落ち着いて…(年末近くになると色んな物バカみたいに高くなるから、ギルガメッシュさんの申し出は正に天からの救いの手なんですよ…!)」
「落ち着いてなど…いられません…!(だからと言って俺を置いていくのは…!)」
「オディナさんにはお皿の準備とか、テーブル拭きとかお願いしたいんですが。ダメですかね」
「…それは……」
「年末年始は皆浮かれて泥棒に遭いやすいんです。アパートの警備もお願い──」
「やります。このディルムッド、必ずやこの城をお守りします!」
「ふん。話は決まったな。行くぞ、決戦の地へ──!」



……ただのスーパーなんですけどね。