色褪せたレールに零れていく、真っ白な雪。その様子を寝惚け眼で眺めながら、私は心の中で天気予報のお姉さんを恨んだ。今日は一日快晴であると、それこそ太陽のような眩しい笑顔で言っていたのに。そう文句を垂れながら、睨むように空を仰いでみると、冷やかな風が容赦無く私の鼻先を撫でる。


……早く電車来ないかな。


逸る気持ちのままに、ホームから少し身を乗り出してみたり、足元の点字ブロックを靴の先で弄ってみたり。まるで幼い子供のような私の振る舞いに、背後で恋人が笑っているとも知らず。


「お前はガキか」


耳に届いた、聞き慣れた声。それはからかいめいたものを含んでいて、尚且つ、笑いを堪えているような。振り返ると、寝起きであろう瞳をとろりと細め、頬を緩ませたエースくんが立っていた。


「見てたの」
「おう、かわいかった」
「後でサボくんに記憶消してもらおうかな」
「あいつなら今日は来ねえぞ。なかなか布団から出やしねえ」
「流石低血圧」


枕を抱きしめながら凄む彼を想像し、思わず笑みがこぼれる。


「今日は一段と寒いもんね」
「な、サボの気持ち分かるわ」
「この寒さどうにかできないのかな、私の彼氏さんは」
「……俺の可愛い彼女さんの手を温めることはできますけど?」


冗談のつもりだったのに、彼は悪戯っ子のような笑みを浮かべながら、私の顔を覗き込んできて。恥ずかしさから、私は「みないで」と彼の頬をぺちりと叩くが、する、と伸びてきた長く節立った指に、それも絡め取られてしまう。こいつ、初のくせにこういうことをナチュラルにやってのけるのが腹立たしい、し、何だか照れくさい。ので、彼の脛を蹴ってやった。「おい!」と涙目で声を張る彼から逃げるように、私はそっぽを向いて、マフラーに顔を埋めた。……手は繋いだまま。
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -