「いってきますのちゅーは?」
 

水縹色の生地に、散りばめられた小花たちが可愛らしいスカート。それをふわりと翻して見えた顔は、案の定、仏頂面で。ぶさいく、と、その鼻を摘まんでみれば、手の甲を思い切りつねられた。返り討ち。いてえ。


「それはサボくんがしたいだけでしょ」


そう、全くその通り。俺がしたいだけ。お前がしてくれるまでは遊びになんか行かせないつもりだ。
「しねえの?」と訊けば、「う、」と言葉を詰まらせる彼女。泳ぎ、狼狽える瞳をじっと見据えれば、逃げるようにそっぽを向かれてしまった。
彼女曰く、俺に見つめられると弱いらしい。前に「サボくんはずるいんだよ」とか何とか言っていたが、そういうことなのだろうか。まあ何はともあれ弱点ならばこれを使わない手はない。「確信犯め」と睨まれたが、それすらもいとおしいと思えてしまうのは、俺がこいつにぞっこんであるという証拠だろう。


「ほら」


そう腕を広げれば、彼女はお手上げといったように溜息を吐いて、俺の頬に、その細い指をそっと添えた。そして、触れる唇。


「ん、満足。いってらっしゃい」


消えるように離れていった彼女の唇を、俺は名残惜しく見つめながら、そう微笑む。
本当は全然満足なんかしてねえけど。まあ、続きは帰ってからのお楽しみということで。
俺は熟れた桃のように色づいている彼女の頬を撫でて、愛おしい背中を送り出した。
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