暗澹とした空からこぼれる、白銀の雫たち。それは、ぽつぽつとやわい音を立てながら、薄紙を剥ぐように、地に居場所を作っていく。その様を茫然として眺めていると、まるで、どこか遠く、知らない世界へと魅き込まれてしまいそうな、そんな感覚に陥ってしまう。しかし、不意に背へ届いた「あれ、帰ったんじゃなかったのか」という聞き慣れた声が、私の意識を一気に現実へと引き戻した。
……振り向けば、案の定、そこにはサボくんがいて。


「……傘が無くて」
「予報では晴れだったもんなあ。でもまあ、ご愁傷様ということで」


意地の悪い表情と、その言葉。それにとどめを刺すかのように響めいた、ぱさり、という乾いた音。溢れる殺意のままに彼を睨めば、「嘘だよ、冗談。家まで送る」と、私の腕を優しく引いて。


「女の子が身体冷やしちゃまずいからな」
「いつもはそんなこと言わないくせに」
「惚れた?」
「なわけ」


そう返して、私の顔をにやにやと覗き込む彼の頬を、ぺち、と優しく叩いた。それと共にちらりと見えた彼の鞄の中の折り畳み傘は、まあ、見なかったことに。
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