「うわ、ガチじゃん」


"ガチじゃん"というのは、昨夜、私が送ったラインに対してであろう。その話題の中心となっていた二人に髪をいじられている私を、彼女は憐れむような瞳で眺めながら、隣の席へ腰を下ろした。


「誰だ、こいつ」


矢先、右耳に飛んできたそばかすの訝しげな声。すると、そんな彼に応えるように、左耳からブロンドの声が飛んでくる。


「この子、インフルで先週から休んでいた子じゃねえか?治ったんだな」
「あ〜、だからなまえの隣がずっと空いてたのか。納得」


ころころ進む二人の会話を見守っていると、「名前呼び……」と吃驚したような声が耳に届いた。振り向けば、またもや憐れむような彼女の瞳。おいやめろ、そんな目で見るな。

"彼女"は原琴子。数少ない、私の大切な友人である。彼女は先週から流行乗り遅れのインフルに罹っていたが、昨夜、「我、明日から復活なり」との連絡を受けた。この一週間、その言葉をどれだけ待ち望んでいたか。その熱い思いと例の二人のことを伝えれば、「何それウケるんだけど笑」との返事が。何が笑だよもっかいインフル罹ってこい。


「どうも、なまえの友人の原です。お二人のことはなまえからよくお話を聞いています。よろしくね」
「あ、これはどうもご丁寧に。なまえさんのつくる飯に胃袋を掴まれた俺の名はエース。どうぞよろしく」
「顔に似合わず礼儀正しいなオイ」
「俺はサボ。なまえ母ちゃんは俺たちの誇りだ。よろしく」
「えっ、なまえどういうこと?こんな大きな子供が二人もいたなんて聞いてない」
「私もこんな阿呆な子供産んだ覚え無い」
「ってかなまえ、俺たちのこと話すんだな」
「そうなんだよ、昨日も二人への愛を存分に語ってて」
「おい調子に乗るな馬鹿原」
「何だ照れてんのか、可愛い奴だなお前」
「照れてないわ眼科行け」


何だこれ、物凄く疲れるんだが。とりあえず予定していた原の全快祝いは無しの方向で。


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