inzm11 | ナノ






最近いろんなやつがおれに会いにくる。それもしょっちゅう。そのたびにいろんなもんをおいてきやがるから、ちいさいへやにいろんなものがあふれてちょっとじゃまだ。このまえは源田と佐久間がきた。佐久間は眉間にすっげーしわよせてずっとむすっとしてた。いやならこなきゃいーだろばーか。そういったら源田は困ったようにふにゃふにゃわらってた。佐久間はちょっとすなおじゃないんだって、あのペンギンやろうはちょっとってレベルじゃねーだろ!そんな源田はおみやげっつって果物のつまったかごくれた。ひとりでこんなくえねーよ。なかにはちゃんとバナナもはいってた。あいつ、よくわかってんじゃん。つぎに会いにきたのは帝国だったやつらだった。辺見がうざかった。でこわるぞっつったらぎゃーぎゃーさわいで咲山になぐられてた。洞面と成神はけらけらわらってた。寺門は胃がいたそーなかおしてた。あいついっぺん入院したほうがいいんじゃねぇの。かえりぎわ、だれともなく帝国のユニフォームおいてきやがった。いったいなんにつかうってんだよ。まあタオルにでもしてやろうとおもった。そのつぎは、なつかしい、真帝国のやつらだった。小鳥遊と弥谷と比得と目座と日柄。ほんとはぜんいんきたがったけど、東京と愛媛はとおいから、これるやつだけきたって目座がいってた。あいかわらず比得のかおはきもかった。化粧おとしゃいーのに。小鳥遊の目のまわりはあかくなってて、おまえでも泣くことあんだなってからかったら、花粉症なめんなってキレられた。弥谷がひっしになだめてた。日柄は源田からもらったリンゴをかってにかじってて、それが妙ににあってるとおもった。あいつらはおれがあつめたチームだったやつぜんいんのよせがきがかかれたユニフォームおいてった。青春か!もう何年まえだよ!おまえらほんとユニフォームすきだな!しょうがないからハンガーにかけて帝国のといっしょにまどのちかくにかけといた。ある雨の日、はっと目がさめたら、まくらもとのちいさい棚のうえにこれまたちいさい花瓶がおいてあった。なまえもしらねーあかい花がぽつんとさしてあった。花じたいにこころあたりはねーけど、それでもだれがやったかはピンときた。おもわずわらってしまった。にっあわねぇ!雨の日にまであのあやしさまんてんのグラサンかけてんだろうなア!花のチョイスがあのひとらしい、なんておもった。それからしばらくしたら、あのラーメン屋のおっさんがきた。あいつはなんとなくにがてだ。あのひとのことをねほりはほりきかれんのかとみがまえてたら、たあいもないせけんばなししかしなかった。さりぎわに写真をくれた。写真立てにはいってたから、そのまま花瓶のよこにかざった。そういやいつだったか、自称『カミサマ』もきたっけなア。まぶしいきんぱつをひらひらさせて、きみがなにをよろこぶのかわからなかったからえらぶのに苦労したよ、とぴんくのクマのぬいぐるみをわたされた。うっぜー!どうかんがえてもいやがらせだろ!いらねーっつったのに、かってに写真立てのよこにおいていきやがった。ちくしょういつかあいつのはねむしってやる。そのあともどんどんひとがきて、殺風景なへやにはどんどんものがふえてった。そうだ、そういや鬼道ちゃんもきたんだっけ。いつものなかよし三人組に世界大会のときのやつらで、わいわいうるさかった。ぼけたりつっこんだり漫才か!そうこうしてたら豪炎寺がてにもってたふくろをわたしてきた。あけてみろっつーからあけてみた。きいろいクマのぬいぐるみだった。おまえもかよぉぉぉ!いいかげんにしろよまじで!妹じゃねっつの!円堂もそんなにこにここっちみんじゃねー!まじでうぜー!でもまあしかたなく、しかたなくだ、ぴんくのクマのとなりにおいてやった。棚のうえがぎゅうぎゅうになった。そんななかで、鬼道ちゃんだけは表情がかたかったけど、まあそれはしょーがねぇかなと思う。




つぎに目がさめたとき、おれのねてるベッドのまわりに、いままできたやつがせいぞろいしてた。泣きそうなやつと泣いてるやつがいる。しんきくせぇなあ。おれはおれで、なんだか妙にねむい。目だけでまわりをぐるっとみまわして、ベッドサイドにころがったサッカーボールに気がついた。だれがもってきたかは、まあだいたいわかってっけど。どいつもこいつもサッカーばかばっかだけど、そのなかでも特別のサッカーばかでまちがってねーとおもう。そういやしばらくやってねぇなあ、サッカー。やりてぇなあ。でもねみぃ。とりあえずもうひとねむりしよう。ああそうだ、おれはいますげーねみぃからむりだけど、つぎに目がさめたら、それこそそこのサッカーばかじゃねぇけどさ、みんなで一緒に、サッカーやろうぜ。









「不動、さいご笑ってたよな。」

病院からの帰り道、円堂が呟いた。いつも太陽のように明るい円堂でも、さすがに沈んだ顔をしている。辺りは薄墨を流したように暗かった。点在する街灯は頼りなく明滅を繰り返し、いっそう気が滅入った。

「あいつ幸せだったのかな。」
「円堂、」

いたたまれなくなって声をかけるも、続く言葉が見つからない。豪炎寺も黙ったままだった。それから俺達の間には特に会話らしい会話もなく、ただひたすらに歩き続けた。円堂と別れ、豪炎寺と別れ、ひとりになっても迎えを呼ぶ気になれない。何物かに憑かれたように俺の足は動きつづける。
遠くからきこえる猫の泣き声が、何もできなかった俺を、嘲笑っているようだった。




あなたの幸せを願う
2010.05.25




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