とある理数系の彼に彼女はいいました
「答えがあるものだけじゃつまらないわ」
その言葉の意味は理解できなかったけれど、でも彼女が悲しんでいることだけはわかりました
どうして悲しんでいるの?
その理由を求めても彼女はただ笑うだけ
「泣かないで」
「泣いてないよ」
彼女は笑っていました
わらって、ないていました
僕は数学が得意です
どんなに難しい計算も解いてしまいます
けれど国語は苦手でした
答えはひとつじゃないそれは、僕にとってはもどかしかったのです
見て見ぬふりをして過ごし始めたのはいつからだろう
まるで僕はからくりのようでした
ねぇお願い、教えてよ
憧れの教授にきけばこの感情は分かるのでしょうか
大好きな先生にきけば答えを教えてくれるのでしょうか
じくじくいたいんだ、助けて
理解できないものは今までずっと理解をしようとはしなかった
ただそういうものだと、思うだけだった
でもそれは間違いだったのでしょうか
あの頃解けなかった国語の問題は、今もまだ解けないまま
この問いすら僕は捨ててしまうのでしょうか
彼女の透明な涙すら僕は目を閉じてしまうのでしょうか
この感情の答えを出す数式があったら教えてください
計算は得意なのです
いままでそうやって生きてきたのです
けれど彼女はそれを否定するのでしょうか
「否定なんてしないよ」
そうだよね。だって君は優しいもの
優しいのに、けっして僕に答えは教えてくれない
瞼の裏にはあの日解けなかった問題たち
「解けなかったのではないでしょう?」
「あなたは解くのを自ら諦めただけ」
その言葉はどこまでも優しく、僕の胸をえぐる
そういえば昔使ってた国語の教科書はどうなったのだろう
可愛らしい絵が描いてあったあの物語の結末はなんだっけ?
とある理数系の少年の悩み
解答がないのなら、どうすればいいんだい?
「解答をあなたがつくればいいのよ」
けれどそれは、とても怖いことだよ
「どうして?」
否定されたら僕はきっと、駄目になってしまう
誰よりも臆病な僕だから
自分をさらけだすのは怖い
あぁでも、それでも君の前だったらいいと思えてしまう
どうしてだろう?どうして君なのだろう?
僕を笑顔にしてくれるのは
僕に笑いかけてくれるのは
僕の心が温かくなるのは
あぁ、そうか。この気持ちは
きっとこの答えが分かるのは、あともう少し