(家族?兄弟?それとも…)


家の掃除が一段落ついたところで休憩しようと、紅茶かコーヒーでも入れようと思った矢先、メッセージを受信したのを知らせるために携帯が鳴った。
掃除を始める前に"彼"へと送ったメッセージに対して練習が終わったという返事がきたのか、それとも研磨からなのかと思いつつ携帯を手に取った。
通知のところには[赤葦くん]と書かれていた。
アプリを開くと彼らしい返事が来ていた。

[久しぶりだね。何かあった?]

私が赤葦くんと連絡を取るときは必ずと言っていいほど何か起こったときだけだったりするので、練習が終わったら連絡ちょうだいと送ると必ず何があったか聞いてくれる。
赤葦くんと話すのは研磨を話すのと同じぐらい気楽でいれる。
彼が私に返事を送るのは家に帰ってやるべきことを全部済ませてからということを知っているので、私は迷うことなくアプリ内の通話ボタンを押した。

《かけてくると思った》
『バレてましたか…』
《既読が付いたのを見てたからね。どうかした?》
『どこから話したらいいのやら…』
《俺の勘だけど、黒尾さんと何かあった?》
『…赤葦くんはエスパーか何かですか?』
《酷いな。普通に考えて弧爪とみょうじさんが喧嘩するなんて想像つかないから》
『そういうこと。赤葦くんの予想通り。てっちゃんのことだけど…』
《うん》
『今日ね、体育館裏で告白されてるのを見たの』
《黒尾さんが?》
『うん。それを見てから何だかモヤモヤして…。言い合いになって…』
《珍しいね。じゃあ部活の手伝いせずに帰ったの?》
『てっちゃんが特別な日以外は頼んだ覚えはないって』
《黒尾さん、思っても無いことを…》
『イラついたから、赤葦くんに話聞いてもらいたいなって思って。…ごめんね』
《いいよ。お互い様だよ。俺もよく話聞いてもらってるからね》

挨拶がてらの会話をしてから本題に入った。
今日見たことをさっきより詳しく話すと、赤葦くんは少し悩みつつも応えてくれた。

《俺にはみょうじさんにとって黒尾さんみたいな幼なじみはいないからうまく言えないけど…。一般的に言えば恋愛感情に似てるような気もするけど》
『…恋愛…?私がてっちゃんに?』
《絶対とは言い切れないけど。もし、今日告白していた人と黒尾さんが付き合ったとしたらどう思う?》
『付き合ったら…』
《今まで当たり前のように隣にいただろうけど、それもなくなるってことだよ》
『…いやだ』
《それがみょうじさんの本心だと思うよ。だけど、それが幼なじみとしてなのか1人の女性としてなのかは俺には分からないけど…。その辺は弧爪に聞いてみたらいいと思うよ》
『てっちゃんが独占してると思う…。機嫌悪くなったら研磨を放さなくなるし、私と口喧嘩したときは尚更…』
《確かクラスが一緒って聞いたけど?その時にでも聞いたらどう?》
『そうだね…。そうする。ありがとう』
《どういたしまして。今度の連休に合同練習があるはずだから、またその時に》
『うん。おやすみなさい』
《おやすみ》

通話を終了してから、赤葦くんに言われたことを考えてみた。
てっちゃんに対して抱いている感情がなんなのか…。
小さいことから一緒にいることで家族のような兄弟のような感じがするのは否定しない。
てっちゃんが自分の知らない人と話しているところを見たりすると少し寂しい気持ちになったりもする。
まるで自分の知らないてっちゃんを見ているような気分になるので、実はそんなてっちゃんを見るのは好きじゃなかったりする。
胡散臭い言葉や厨二病を患っているのではないかと少し疑うべき言葉を発したり、チャラチャラしているように見えたり人を挑発してからかったりしている反面、時にはとても頼もしかったり、見た目に反してしっかりしているところとか…。
大きな体に大きな手を持っているくせに実はいろいろと器用だったり、面倒見がいいことなどそういうてっちゃんを全部ひっくるめて好きだと思う。
でも、その"好き"と思うのは今まで一緒にいたからなのか、それとも赤葦くんが言っていた通りの恋愛感情なのか…。

その日以来、言い合いをして少し気まずい雰囲気になっていることと、変に意識してしまって私はてっちゃんをちゃんと見れなくなっていった。
それからというもの言い合いをした日から数日経った今でもきちんとてっちゃんと話をしていない。
研磨に借りを作ってまでてっちゃんから逃げるように存在感を消した。
結局、数日経ってもてっちゃんに対してへの気持ちの答えが出ずに連休を利用した梟谷グループの合同練習の日がやってきた。

((どうしてこんなのもてっちゃんのことが気になるんだろう…))


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