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ねずみを飼うホーク

*ホークが野ネズミを飼うことになる話*


 畑を荒らされて困っているという村人のため、ホークが野ネズミ退治をすることになったのだが……
 いざ捕まえてみると案外可愛らしいネズミで、心根の優しいホークは野ネズミを殺すことを躊躇ってしまう。野ネズミ退治を手伝ったジャックが、それならば俺がと野ネズミを仕留めようとしたがホークに阻止された。

「けどお前、このネズミどうする気よ」
「俺が飼うよ」
「餌どうすんの?」
「ちゃんと世話する」
「お前夜まで帰れないのに世話できないだろ〜?」
「……するよ、ちゃんと。だって殺せない。こんなに小さな生きものでも、ちゃんと命があるんだし……簡単に殺生はできない」

 普段無口なホークが、懸命に言葉を紡ぎ出していた。

「そこまで言うならホークが世話してやればいい。お前ってほんと、動物が好きだよな。ほら、あの暴れクマ覚えてるか?」
「あ、ああ……」
「結局殺せなくて、それどころか懐かれちまってさ。山に帰すの苦労したよな〜」
「……」コクリ

 ホークは動物に懐かれやすいらしく色んな動物と縁があった。畑を荒らす害獣であっても、ホークは駆除せずに共存できる道を選んできた。ジャックは毛皮など自分でこさえるので、野ウサギやキツネや色んな動物を狩りしてきた。動物を殺生して暮らしてきたので動物を愛でるホークの感覚はあまり理解できていない。

 ホークが野ネズミを飼い始めてからひと月ほど経った頃。





「あれ?この穴どうした?」

 ジャックがホークの上着に小さな穴が空いているのを発見する。

「……穴、あいてるか?」
「ここに親指くらいの穴があいてるぜ?」
「それ、たぶんあいつだな。野ネズミのしわざだ」
「ホークが飼い始めたネズミか?」

 ホークはこくりと頷く。

「今も一緒に暮らしてるんだな」
「ん。クルミの家、つくってやったんだ。……あ、クルミっていうのはネズミの名前で、、」
「(ちゃんと名前も付けてんだから可愛いよな、ほんと)……へえ?大事にしてんだな」
「そうだな……家族だから」

 ホークは優しい表情をして、目を細めて話す。
 ジャックはそんな彼を見ていると穏やかな気持ちになり、愛しくもなった。

「クルミはさ、胡桃くるみが大好物で、可愛いやつなんだ」
「ふ〜ん?……けど俺からすれば、ホークの方がずっと可愛いけどな?」
「〜〜〜ッッ」

 またそうやってからかうんだからと
 ホークは俯いて赤くなった顔を隠そうとした。


おわり

2020,7,19
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