earnest
「はぁ…」
「?最近ニーナ元気ないねー」
「ナニナニ?どうしたの?」
「聞いてくれよ、こいつ、名前も知らない女、好きになったみたいでさー」
「うそーっ」
ベラベラ喋んな、と睨みをきかせてみても、女の子達とのお喋りで、ダチは気付きもしない。
休みの度にあの人に会った場所に行っても
今までの事がまるで嘘みたいに、あの人の姿はなくて
胸が痛い
ねぇ、あんたは?
会いたくないの?
俺なんか、眼中にない?
一度だけ遊んで連絡もしない、なんて、良くあることなのに
あの人とは、こんな所で終わらせたくなかった
会いたい
あんたの声で
名前を、呼んでほしいんだ
そんな俺の願いなんて、お星様も、神様も叶えてくれなくて
痛い痛い、傷痕を残して
俺の初恋は始まる前に消えた
−−と、思ってた。
「「え」」
はばたき学園の入学式。
真新しい制服に包まれて、真新しい靴を下駄箱に入れた時
見覚えのある人と擦れ違った
「あんたっ…」
見間違えかと思った
マジで、奇跡かと
「………また、会えたね」
けど、そう言って、あんたが笑うから
「やっと自己紹介できるね。小波美奈子宜しくね」
「に、新名、旬平…」
気の利いた言葉なんて出るわけなくて
けど、
心臓のバクバクだけは、耳にしっかり聞こえてた。
ねぇ、美奈子ちゃん
五回目の再会はさ
必然だったって
思ってんのは、俺だけかな?
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