狂った歯車 | ナノ

▽ 踏み出す一歩


あんな事したから、連絡も取りづらくて、アンタが部活にも出てこねぇから、謝るタイミングもなくて、ただ時間だけが過ぎてった
スゲー謝りたい…
もうあんな酷い事絶対しない…



嵐さんと乱取りしてて投げられまくって、一回もマトモに技かけさせてもらえなくて、何も考えないようにがむしゃらに柔道に打ち込んでた


嵐さんが外に出てって、顔にタオルかけてのびてたら、ヒンヤリとしたドリンクのボトルが手に触れた


「…大丈夫?」


この声絶対聞き間違う訳ない
多分オレ泣きそうな顔してる…
タオルを顔から外せなくて、当てられたドリンクのボトルを辿って手を握る


「この前…マジゴメン…」

「…うん、いいよ」

「もう…、いや何でもない」


それでもあんな事しないなんて言えなくて、離せないでいる手をアンタが少しだけ握り返してくれた

投げられまくったグダグダな体に、それだけで、少しづつ力が沸いて来る
起き上がって渡されたドリンクを飲み、アンタの方を向くと
ジーッとオレを見つめててすぐに俯いた


「…ブッたりしてゴメンね」

「え?」


オレ打たれて当然の事したんだけど…
それでも申し訳なさそうにするアンタに、またオレはつけ込みたくなるんだ


「じゃあ、キス…して…」

「…いいよ」


え?今…何て言った?
胴着を掴まれて、引っ張られて、目をつぶったアンタの顔が近づいてきて、それ以上の事してんのに、急激にバクバク心臓が鳴り出して、鼻をかすめ、息が触れる瞬間、思わず目をつぶった




ガラッ




触れそうだった唇がバッとオレから離れた


「あ、新名起きたか?」

「あ、う、うん、もう大丈夫みたい」


立ち上がり、嵐さんにもドリンクを渡しに行くアンタを横目にみて、タオルを頭からかぶる
自分の顔の温度が尋常じゃない

何だよ…マジで…
訳わかんねぇ…

どうしてアンタ悪くないのに、キスしようとすんの?
これ以上オレをつけ上がらせたりすんなよ!
自分じゃ止めらんねーんだ
期待すんじゃん…
もーマジでヤダヤダ


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