▽ そして時は動き出す
「わたしはニーナが好き、大好き、ずっと一緒に居たいの、もう遅すぎる?」
ボロボロ涙がアンタから零れ始め、オレを不安そうに見上げてた
何…コレ…?
好き…って、マジで…?
アンタがオレを?
夢じゃなくて?
スッパリフラれる覚悟でここに来たし、こんなの予想してなかった
信じられなくて、ずっと苦しかった心がジワリと溶けだして、嬉しくて、喋ったら泣きそうで、必死で『好き』って言葉を普通を装って出そうとしたけど、色んな事が込み上げてきて、言葉にならない
思いっきり引き寄せて、胸にアンタを掻き抱くと、その温もりに溢れる気持ちが口から零れ出した
嬉しい…
マジ嬉しい…
好き…大好き!
「好きだよ、美奈子ちゃんがホンッと大好き、遅くなんかねーよ…オレ諦めらんなくてここ来たし、オレもずっと、ずっと一緒に居たい」
アンタがオレの腕の中にいて、アンタの細い腕がオレの体を抱きしめ返した
初めて触る事が許された瞬間、心にずっと刺さってた棘が抜けた気がした
心の奥底が暖かくて、初めて感じる満たされた気持ち、込み上げる抑えられない愛しさ、色んな思いが全部が一緒に溢れてきて、こんなスゲー幸せがあるんだって感じた
「…もう、ダメなのかと…思った」
「オレだってダメだと思ってた…」
アンタが涙で濡れた顔を上げ、いつもの優しい顔で微笑むと、つられて顔が緩くなり、親指で涙を拭ってやる
「初めて会った時から、ニーナの事気になってたよ」
「いつ?」
「恥ずかしいから、内緒」
小首を傾げてイタズラっぽく笑って、またオレの胸に顔を埋め、ちょっとだけ抱きしめられる手に力をこめられる
もしもそれがオレと同じだったら、スゲー嬉しい
「顔、上げて」
クイッと頭を撫でる様に上を向かせる
「なぁに?」
「あ、あのさ、下の…名前で呼んでくれない?」
「旬平…くん?」
ずっと…呼んで欲しかったんだ
恥ずかしそうにオレの名前を呼んでくれた
そしてブレザーを掴んで背伸びして、オレの唇に柔らかい感触が押し付けられ、すぐに離れてオレに満面の笑顔で笑いかける
「旬平くんが…大好き」
うっわっ!オレ絶対顔真っ赤だ!
ヤバい恥ずかしい!
けど嬉しい!
パネェ!マジパネェ!!
もーっ!何なのアンタ!
両手で顔を挟んで、オレからアンタにもう一度唇を重ね、甘い余韻を残しながら、唇を離してゆっくり目をあけると、目が合って二人で笑う
「オレも美奈子ちゃんが大好き!」
飛びつくようにアンタがオレに抱きついてきて、それをしっかり受け止めた
もう何かが間に入ってる感じもしない
確かに感じる腕の中のアンタの存在
アンタにもっと、もっと伝えたい事があるんだ
すれ違ってばっかだったけど、これから二人で埋めていけばいい
今度はちゃんと伝えるから
だからアンタも何でも言って
もう絶対離さない
傷つけない
オレの
最初で最後の大切なカノジョ…
END
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