▽ 暗転
大迫先生が出ていって誰もいなくなった教室で、席に戻り帰り支度をするアンタをみてた
俯いてしばらく動かなくて、アンタが泣いてるのが分かった
急いで教室に向かって扉を開ける
慌てて涙を拭い、笑顔を作ろうとするアンタの姿に、胸がもう完全に押し潰された
「…ゴメンね、遅くなって」
「いいよ、…アンタんちの近くの公園まで行こっか」
「うん」
アンタもオレも何も言葉を交わせなくて、ただ二人で並んで公園に向かった
日が落ちるのが早くて、公園に着く頃にはすっかり暗くなってた
ベンチに座り買ってきた妊娠検査薬を渡す
「ゴメンね…こんなの買わせちゃって」
「いいよ…アンタがオレに謝る事なんて、一つもねーし」
「恥ずかしかったでしょ?」
「まぁ…かなり…」
申し訳なさそうに話すアンタに少しだけ微笑んで手を握った
調べる前に絶対伝えなきゃいけない事
「…どうしたの?」
「うん…オレ、ずっとアンタに言えなかった事があるんだ」
「…何?」
「オレ…アンタの事好きだよ、ずっと好き」
「…え?」
信じられないって顔してオレをみつめる
そりゃそうだよな…あんだけひどい事し続けたんだ
「コレもちゃんと消すから見てて」
一番最初に関係を強要したアンタの写メを目の前で消し、アンタをみると顔が曇ってた
ホントにゴメンね…
「ヤリたいからとか、そんなの全部嘘、ただ本当にアンタを好きで抱きてーって思ってた、もしアンタが妊娠してたらオレ、アンタが望む様に責任とるつもりだから」
どんな結果になっても一生賭けて償うよ
しばらくの沈黙の後アンタが口を開く
「…じゃあ、わたしが高校辞めて働いてっていったらどうするの?」
「辞めて働くよ」
「ジュエリーデザイナーになる夢は?」
「いいよ、そんなのどうでも」
「良くなんかないよ」
「散々自分の欲でアンタを振り回して、自分だけ都合のいい人生なんか欲しくねーよ」
「後悔…してるの?」
「うん…」
しばらくアンタが黙ってて、ベンチから立ち上がった
「コレ…してくるから待ってて」
「…うん」
告白の返事はやっぱ無しか…
仕方ねぇよな…
しばらくしてトイレから戻って来て、オレの横に座り、体温計みたいなのを俺の前に出した
「ここに線が出れば妊娠してるんだって」
二人でじっとそれを見つめてても反応は無く、青い線が入る事は無かった
「わたし大丈夫って事?」
「みたいだね」
「良かった…」
緊張の糸が切れて、ワンワン泣きはじめたアンタの頭を撫でる事しかオレには出来なかった
良かった…
これ以上傷つけなくて…
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