▽ 飢え続ける躯〜前編
会計終わって、オレの元に走って来る
何でだろう…オレそれだけでも嬉しいのに、自分の中の貪欲な気持ちが抑えられない
「あのさ、家までついて来てくれない?検査は何でもなかったけど、今日は安静にしてろって、先生が頭だから、急に目眩とか起こすかもって、こえーじゃん?」
嘘だけどね
「そうなの?今は大丈夫?クラクラしちゃったりしない?」
あんなに口きかなかったクセに、すごい心配そうな顔して、真っすぐオレを見上げてくるから、ちょっと良心が痛んで目をそらす
「…今は…大丈夫」
「早く帰ろう?横になった方がいいよ」
どうしてアンタはそんな優しいんだろ?
オレが今何考えてるか知ってる?
「気分悪かったら、すぐいってね?」
オレの手を握って、たまに振り返って俺を気遣いながら歩く、それはマネージャーの義務なの?
それとも、本当にオレを心配してくれてるの?
冷静に考えれば、あんな事されて、ひどい事言われて、本気で心配出来る奴なんかいない…
つか…オレは無理
マンションについて、玄関まで来ると手を離してまた心配そうにオレを見上げる
「すぐ、横になってなきゃダメだよ?」
「上がっていかない?」
「…それは…」
急に警戒してちょっとずつ後ろに下がり始める手首を逃げないように掴んだ
「い、いやっ!!」
こんな自宅前でヤバい事してるって、近所に見られても困る、力を込め逃げようとする体を無理矢理玄関に引きずり込み、素早く鍵を閉めて、暴れる体を抱え上げ、そのまま自分の部屋に運んで、ベッドに下ろす
「嘘…ついたの?」
「うん」
「体は…ホントに平気って事?」
「そう」
「ひどい…」
「ずっとオレを無視してたアンタもひどくない?」
何か言いたそうな顔で、オレをみてキュッとスカートを両手で掴む
まぁ…言いたい事なんて分かるけどね
「…ごめんなさい…、もう無視したりしないから家に…帰して」
「ダメ、帰さない」
「ご両親帰って来るでしょ?徹平くんも…」
ああ、通りで今大人しくしてんだ
家族が帰って来るからオレが無理な事しないって思ってんだ
「今日は帰って来ないよ」
「…え…?」
「親は親戚んち、徹平は友達ん家今日はオレ一人だけ」
状況を理解して、自分の身に何が起こるかわかったアンタが小さく震え出す
そう…もっとビビればいい…
無視したりした罰、オレメチャムカついてんだ
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