▽ 飢え続ける躯〜前編
「新名、お前すぐ病院行ってこい、そこで保健の先生言ってたぞ」
「え…いや、もう大丈夫っス」
「頭打ってんだから、診てもらってこい」
もうピンピンしてるし、病院なんか面倒臭い所行きたくねぇよ
「おい、おまえが新名に付き添って病院行ってきてくれ、コイツ一人じゃ絶対行かねーから」
アンタの方見てオレを指差し、嵐さんが呆れ顔でアンタに頼んでる
オレ、今初めて投げられて良かったって思った
付いてってくれんなら話しは別
メチャ病院行きてぇ
「あ…うん、分かった」
「そのまま家帰っていいから、後頼むな」
嵐さんがそれだけ言い残して、保健室を出てって、アンタの表情に影が落ちる
「…着替えて、校門で待ってるから」
顔もみてくれない…
けどアンタの義務感には感服するよ
チャンスをくれた嵐さんにもね
着替えて急いで校門に行くと、部長命令で待ってたアンタがいた
「お待たせ」
「…うん、大迫先生が紹介してくれた病院聞いたから、そこに行こ?」
「遠いの?」
「ううん、そんなに遠くないと思う」
歩き出したアンタの手を引くと、ビクッ、と体を強張らせる
こんなトコでいくらオレでも襲わねぇよ…
「車道側、オレが歩くからアンタこっち」
「…ありがとう」
複雑な顔でオレをみて、すぐ顔を逸らす
手を離してやり、並んで歩いてバス停まで二人で歩いて、バスに乗り会話もなく病院に向かう、隣にいるのに前より距離が遠く感じる
アンタはもう帰りたくて仕方ないんだろうな…
病院で検査してなんも問題なくて、もう帰らなきゃ行けないって思うとメチャ淋しい…
最近避けられまくってたから、ただ一緒に居たい…
アンタが会計してる間に、携帯いじってたら徹平からメールが入ってた
『父ちゃんと母ちゃん泊まりで親戚んち行くから、勝手に何か食べといてだって、俺も友達ん家とこ泊まるから、兄ちゃんも彼女連れ込めば?』
って彼女じゃねぇし
まぁそれは置いといて、て事は今うち誰もいねぇって事か…
ゾワリと自分の中に良からぬ事が思い浮かぶ
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