絆 | ナノ


▽  -kizuna- 05


持ってきた荷物を置いて上着を脱いだ。
殴られたホッペタをさすりながら、何もない部屋にゴロンと寝転がる。

割のいいバイト見つけて変えなきゃ。生活も厳しくなるし、金も貯めなきゃ。
誰かに要らない生活用品とかもらったり出来ないかな。
バイト先でちょっと当たってみよう。

あ、やべ…今の季節冷蔵庫ないと厳しいな…。
出費イタいな…。

それにしても、俺ってずっとこのままでいる訳?
ずっとフリーター?
両親だってコウと一緒に実家で働けって言ってくれたのに、それを嫌がって、フリーターを選んだのは俺。

世話になんのが嫌で、適当にやりたい事があるって言った。
それなのに、それならいくらでも協力するって言ってくれた。

コウの面倒見の良さは親父譲りか…。



やりたい事なんて本当はまだ見えない。
とにかく色んなモノから解放されたかった。
解放されるのが目標で、その先なんて考えてなかったや。
俺ってホントに何もないんだな…。


疎まず育ててくれたコウの両親に、このままじゃ恩返しも何も出来ない。
コウにだって恩を仇で返してしまった。
悔やんだって、今更どうにも出来ることじゃないけど…。


美奈子は…大丈夫なのかな…。
コウのベッドの状態は、マジで普通じゃなかった。
多分…肉体的には俺より酷い事してる。
血だってついてた…。
…精神的には…俺の方が遥かに酷いと思うけど。

思い出して、胃がギリッと痛んだ。
ちゃんと謝る事さえ出来ない。
美奈子の信頼も、コウの信頼も裏切っちゃった。


俺…生きてていいのかな…。
どうして、父さんも、母さんも俺を連れてってくれなかったんだろう。
そんな事言ったらコウに殴られるかな。
もう…殴ってもくれないかな。


ジワッと涙が零れそうになる。
起き上がって、何も考えたくなかった。ただ今生きる事に集中しなきゃ。
忙しくしてれば、何も考えなくていい。

当面いるもんだけ買って、とにかく今日はバイト行かなきゃ。


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