▽ 絆 -kizuna- 05
実家に帰るとルカと俺の部屋は、出て行った時のまんまの状態だった。
お袋がたまに掃除してんのか、埃が積もる事もなく、あの時のままだった。
寝てなくて頭がボーッとする。
これぐらいで丁度いいのかもしれねぇけど。
適当に持ってきた荷物をそこらに放り、ベッドに横になった。
早朝、目が覚めてシャワーを浴び、勝手に軽トラを借りて、West Beachに大きな荷物を取りに向かう。
一人じゃ運び出せねぇもんを手伝って貰う為に、行きすがら職場の奴を一人拉致った。
「琥一さ〜ん。いくらなんでも、今5時ですよ?俺まだ眠いっスよ」
「お前今日休みだろーが。後からいくらでも寝れんだろ?メシ位奢ってやっから手伝えや」
「メシより女の子がいいっスね〜」
「はぁ?んな女の知り合いいねぇよ」
「琥一さんの彼女の友達とか紹介して下さいよ〜。大学生でしょ?」
「無理だな」
もう彼女でもなんでもねぇんだ。
「いいじゃないっスか〜。出会いないんですよ〜!職場男だらけ、女と言えば事務のおばちゃん…。俺にもあんな可愛い幼なじみとか居れば良かったのになぁ。社長に事務に若い女の子入れて下さいって頼んで下さいよ!」
「自分で頼めよ。着いたぞ」
「ケチくせー」
扉を開けると、当たり前だが誰もいない。
俺の後ろからついて来た奴がキョロキョロと見回す。
「あ、皿割れてる」
「こっち片付けっから、冷蔵庫の中のモン出しといてくれ」
「うぃーっす」
連れがキッチンの中へ入り、冷蔵庫をバコ、と開ける音をさせた。冷蔵庫を覗き込み、中に入ってたモンを手に取って、ゆっくり出し始めていた。
「そういやどうして急に実家に戻ろうって思ったんです?」
「別にいいだろ。とにかく早く中のモン出せよ」
睨みつけると、肩を竦めて言う通りに作業を始め、中身が次々に出されていく。
カウンターの横に屈み、割った皿を片付け、あの事を思い出して頭を振る。
自分の部屋に戻り、そのままにしてあったベッドからシーツを剥ぎ取り、ゴミ袋に突っ込んだ。
心臓が早い…。
軽い目眩がして、ソファーに腰掛け、しばらくボーッとしてた。
「琥一さん?」
「あ…?」
「大丈夫っスか?顔色悪いように見えますけど…」
「何でもねぇよ。下、終わったのか?」
「ああ、一応全部出しましたよ。コレ飲んでいいですか?」
出されたのは美奈子が最近ハマッていつも冷蔵庫に入れてた甘ったらしいジュースだった。
「それ、俺が飲むから、他の好きなヤツ勝手に飲めよ」
「こんなの飲んだりするんスね〜。意外」
「…まぁな」
「じゃ、下行ってますね〜」
軽快に螺旋階段を降りる音が聞こえ、手渡された500mlのペットボトルをクルクルと回し、キャップを開けて口をつけると、喉を通っていく強烈な甘み。
「…甘ぇよ。何てモン飲んでんだ、美奈子…」
ソファーから立ち上がって、俺も下の階に降りた。
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