絆 | ナノ


▽  -kizuna- 02


実家を手伝って家に帰ると二人とも居らず、何故か食べかけのホットケーキが冷たくなってカウンターに置かれたままになっていた。
ルカが食べ残すってのが珍しいが、戻ってないって事はバイトの助っ人にでも行ってるんだろう。


「あいつが帰ってきたらまたそのまま食いそうだな」


容易に想像できる姿に誰に聞かせる訳でもない独り言を呟く。
部屋に戻るとベッドのシーツが替えられており美奈子が一回帰ってまた外出したのだろうと予測ができた。
昨晩の事を思い出して少し顔がゆるむ。
バサリと服を置くと、チカッと光に反射した物がみえて拾い上げる。


「何だ?このボタン…」


自分の服を思い返して該当するもんなんてない。


「ボタンとれてんの、気づいてないのか美奈子のやつ…」


ポケットに無造作に突っ込んで、時計をみやると、もう20時を回っている。
少し心配になって、投げた服から携帯を出し、着歴の先頭へ発信する。
長めのコール音の後にようやく聞きなれた声が出た。


『はい』

「お前どこいんだよ!」


中々出なかった事にちょっと不満げに聞く。
何かあったんじゃないかって心配するだろーが。


『…あ…実家に』

「まだ帰ってこねぇの?迎えにくんぞ?」


帰っていつも迎えてくれる声がなかったのがほんの少し寂しかった。美奈子に早く会いたい、早く戻ってきて欲しい。

…絶対いえねぇけど。


『ううん…大丈夫…もう少ししたら帰る…つもり』


そもそも何で実家に帰ってんだ?しばらく帰ってなかったのに少し心配になる。


「どうした?具合わりーのか?」


もしそうなら、無理はさせたくないと言葉を継ごうとしたら遮られた。


『…大好き』

「なっ!お前なんだよ急に!」


いつも突然予想しない言葉を吐く美奈子に俺は毎度翻弄される。


『…コウ…は?』


甘えられる様にいわれるとどうしていいか分からなくなる。
俺はいつまでたってもこんな甘々な雰囲気には慣れない。
近くにいれば抱きしめて好きだって行動で示せるのに。
だから電話は嫌なんだワザワザ言葉にしなきゃならない。


「言わなくても分かれよ!!あーもう切るからな!!早く帰ってこいよ!!」


結局言葉に出来ず、恥ずかしくなって一方的に電話を切ってしまった。


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