絆 | ナノ


▽  -kizuna- 06


ショッピングモールやら、商店街やら、散々引っ張り回されて、荷物持たされてウンザリして、最後はサテンに入って、コーヒーを飲んでた。


「はぁ…、何で琥一なんかと買い物しなきゃいけないの」

「…そりゃこっちの台詞だ」


だから女ってのは面倒臭ぇんだよ。
男同士の方が気が楽でいい。
窓の外を眺めると、よく通ってたレコード屋が見えた。
美奈子と一緒に暮らすようになって、趣味に金使うのも控えてた。

久しぶりに後から少し覗いてみんのもいいかもな。

氷が溶けて薄くなったコーヒーに口づけたとこで、大きなため息が聞こえた。


「どうして男って、仕事仕事なのかな」

「あ?」

「どんなに色んな物買ってもいいって言われたって、好きにさせてもらえたってつまんない」

「いい旦那じゃねぇかよ。何が不満なんだよ」

「あたしが選んだんだもん。いい旦那に決まってるじゃない」


訳わかんねぇ…何なんだよ。
面倒くせぇ。
大体女なんてのはこっちが何か言っても、否定してきやがんだよ。
会話もダリィし、とっととこの店出てぇ。


「んなら、文句言ってんじゃねぇよ」

「琥一は女心わかんないのね〜。何も要らないから、たまにはゆっくり一緒に居たいと思うもんなの。アンタさその調子じゃ彼女にフラれるよ」


グサリと言葉が突き刺さった。
悪かったな…もうフラれてんだよ。
ギロリと睨んで、思わず文句言いそうになんのを、コーヒーと一緒に飲み込んだ。

美奈子もそんな風に思ってたのかもしんねぇ。
週末の買い物すげぇ楽しみにしてたし。

…なのに俺は面倒くせぇって思ってた。
ちゃんと話、聞いてやれば良かった。
んな事、今更思ってたって、終わっちまったもんはどうにもなんねぇ。
いつまでも引きずってても意味もねぇけど。


「そういえば琉夏は元気?」


突然予期しない問い掛けにビックリした。


「…元気じゃねぇのか」

「おばさんに聞いたけど、一人暮らししてるんでしょ?」

「…ああ」

「遊びに行ったりしないの?アンタ達いっつも一緒だったじゃない」

「関係ねぇだろ。そこの店見てぇから行くぞ」

「え〜!話終わってないわよ!」

「話す事ねぇよ」

「ちょっと!」


誰にも触れられたくない。
胸の奥がジクジク疼く。
どうしてるかなんて俺が知りてぇよ。

伝票を取って、サッサと会計を済ませ喫茶店を出て、目の前のレコード屋に向かった。


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