絆 | ナノ


▽  -kizuna- 06


がむしゃらに働いてれば余計な事は考えなくて済む。
家での仕事と、少しだけバイトも始めた。

かなりのオーバーワーク気味だ。
ベッドに転がりゃ疲れてすぐ眠れる。
金もたまって、俺の足りねぇ脳ミソも働きゃしない。
それぐれぇでちょうどいい。


仕事も休みで惰眠を貪ってたとこに、うるせぇ女の声で目が覚め、起きてリビングに降りると、去年結婚したイトコが居た。


「あ!琥一だ!おはよ〜」

「朝からうるせぇんだよ…」

「何よその言い方!旦那と喧嘩して傷心なレディーにむかって!」

「知るかよ、とっとと帰れ」


お袋の話だと家を出てた俺は知らねぇけど、旦那と喧嘩する度に近所の実家に帰って来てたらしい。
そのついでにうちにもちょくちょく来てたようで、今日は運悪く出くわしたみてぇだ。

疲れもたまってるし、2度寝前に用足しとくかと、便所に向かう途中で引き止められた。


「あ、今日買い物つきあってよ!おばさんから暇だって聞いたよ」

「嫌だ」

「じゃ、車貸して」

「ふざけんな」

「荷物持てないし〜、鍵も確保してんのよね」


玄関に置いといた鍵を見せられた。
勝手に愛車に乗ってかれるとかありえねぇ。


「テメェ、マジふざけんなよ」


ギロリ睨んでも、小せぇ頃から知られてる分、全く効果はない。


「いいじゃないの、連れてってあげなさいよ。おっきい体して家でゴロゴロされても、掃除も出来ないし邪魔なのよね」


リビングに戻ってきたお袋の一声で俺の休日の予定は決まり、上機嫌なイトコはいそいそと出かける準備をし始めた。


「そうそう!決まり!荷物持ちが居るならたくさん色々買えるわ」

「ちっ」


人質に取られた愛車の為に、舌打ちして気の進まない外出をするハメになった。
最近嫌なこと続き過ぎだろ。
本気で祟られてんじゃねぇのか?
あまりの運のなさに嫌気がさした。


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