▽ 絆 -kizuna- 06
「やっぱり、琥一さんの彼女って美奈子さんですよね?」
「うん」
今は離れてるけど、きっと2人はまた元に戻るから、そういう事にしておいた
「はぁ…、やっぱなぁ…」
「何?美奈子の事好きなの?ニーナのクセに」
「なんスかその言い方〜!まぁ、ちょっとはいいなぁ…なんて思ってたけど、美奈子さんのバイト上がり、琥一さん迎え来てたりしてて、うかつに声かけれなかったっつーか…」
「あのコウが?」
「そう、あの琥一さんが」
「迎えに?」
「うん、迎え」
笑いが込み上げてきて、ブハッて吹き出した
あのコウがつき合う前から、そんな事してたなんて知らなかった
俺が知ってる限りじゃ、女の子に優しくする事なんて絶対ないのに
「コウそんな事してたんだ!」
「結構来てましたね」
「へぇ〜初耳」
どんな顔で美奈子を待ってたんだろう
眉間にしわ寄せて、美奈子が接客してるのみてたのかな
コウも美奈子をずっと一途に想ってた
本当に俺が入り込む隙間なんてなかったんだな
「やっぱ女の子って、琥一さんみたいな渋い男の方がイイんスかね?」
モグモグ口を動かしながら、夜空を見上げるニーナはコウの事でも思い出してるのかな
それとも美奈子を思い出してる?
ダメだよ
美奈子はコウ専用なんだ
「ニーナみたいなチャラい男は特にダメだね」
そして俺みたいに、正面から向き合えない男もダメなんだ
もっと早く気持ちを伝えてフラれとけば良かったな
「オレはチャラいんじゃねーの!流行に敏感なんです〜」
どこからどうみても、チャラい男にしか見えなかったけど、ハハッと、軽く笑って残りの弁当を食べて、ごみ箱にポイッと投げ入れた
「あ、そうそうニーナ」
「なんスか?」
「大学受験組?」
「そうっスよ、一流」
ニーナも食べ終わった空っぽのお弁当箱とゴミを、まとめて袋に入れて、バスケットのボールみたいにポイとごみ箱にシュートした
「そう?俺も一流受けるんだ」
「マジで!?ライバル!?」
「来年同級生かもね?ニーナが落ちなきゃ」
「学部は何受けるんスか」
「建築」
誰かに聞いて欲しかった
今は誰にも相談出来ないし、仲間が出来るといいなって思った
俺って本当は甘えたなのかな…
「なーんだ!ならオレと学部ちげーし!一緒に頑張りましょうね!」
「うん、そうだね」
コウ以外の奴と一緒にとか考えた事なかったけど、こういうのもいい
今まで俺って、コウ頼りでまともに人とちゃんとつき合ってこなかったもんな
少しは視野を広げなきゃいけない
「かーえろ」
「そっスね!」
「また来るね」
「はいはい」
ニーナと別れて、ハッキリ見えるまんまるい月を見上げ、思いっきり背伸びした
帰りながら置き去りにされた蛍光色のゴムボールを思い出し、何となくそのまんまにしておけなくて、公園に戻り、拾ってオンボロ家まで早足で歩いて帰った
To be continued…
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