▽ 絆 -kizuna- 07
実家から逃げ出して、一人になりたかった
何度となく一人暮らしを、頼んでも了承される事なく、話さえもまともに聞いてすらもらえない
家族で囲む夕食も憂鬱で、わざと少し遅く帰って来ても、両親は待っててくれる
ありがたい事なのに、それさえ重荷で全てを投げ出したかった
「…ご飯、待っててくれなくていいよ…」
「パパが、美奈子と食べるってうるさいの」
「パパと食べるの嫌か?」
「ううん、そんな事ないよ…」
壊れていく、お願い一人にして…
わたしに構わないで
あまり喉を通らないご飯に箸を置いた
「美奈子もっと食べなきゃ」
「お腹いっぱいなの。ねぇ、パパ…わたし一人暮らししたい」
「何度言えばわかるんだ?ダメだって言ってるだろ?」
「お願い…、家賃も光熱費も、ちゃんとバイトして、自分で払うから」
「それでやってける訳ないだろ?ダメだ、ダメ」
「どうしてそんなに一人暮らししたいの?」
ママが、心配そうにこっちを見てた
この生活が苦痛だなんて言えば、2人を傷つけてしまう
「だ、だから大学が遠くて…」
「…お前が一人暮らしなんかしたら、目つきの悪い、か、彼氏とやらが、転がり込むかもしれん」
「えっ…」
「あら〜!コウくん凄くいい子なのよ?お仕事も頑張ってるし、挨拶だって来てくれたじゃない?」
「結局一緒に住ませてくれって、言っときながら、住むとこなくなったら、美奈子を家に帰して、挨拶一つ来ないじゃないか」
コウの事を悪く言わないで
来れるわけない
もう関係は終わったの
わたしが嘘ついてるだけなの…
West Beachが本当に壊される事になったなら、コウは一緒に住もうって、言ってくれたかもしれない
いつだって、わたしの事を考えてくれてたから
パパになんかわかるわけない
「そんなの別にいいじゃない」
呆れ顔のママに咎められて、ムキになって反論するパパを見てた
「いいわけないだろ、礼儀も知らない男に、美奈子を任せられるわけないだろ」
「コウくんはそんな子じゃないわよ」
ママが庇ってくれて、それでもエスカレートしていく両親の口論に、胸が苦しくなってく
これ以上聞いていたくない
それでも、一人暮らしを諦めるとは言えなかった
「…パパは、わたしがコウと別れれば、一人暮らしを認めてくれるの…?」
「そうだな」
「もう、別れてる」
投げやりでそう言ったら、パパのビックリに対して、ママはあんまりビックリしなかった
泣きそうになって、席を立って自分の部屋に戻って、布団に潜り込んだ
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