絆 | ナノ


▽  -kizuna- 07


ママと夕食を作って、お風呂上がりの上機嫌なパパと、ママと3人でご飯食べて、数ヶ月前は当たり前だったこの風景が、今は何だか落ち着かない


「ママ、わたしお皿洗うから、先にお風呂いいよ」

「そう?じゃあ美奈子に甘えちゃお」


そう言ってバスルームに入ったママが、しばらくして、バスルームからわたしを呼んだ


「美奈子ゴメンね〜、ボディーソープがもう少しで切れそうだから、補充しときたいの、そこの棚から取ってくれない?」

「あ、うん」


バス用品が入ってるストック棚を開けて、ハッと気づく
わたし…、ストックのボディーソープ使ってる
今ボトルに入ってるのが、ストック分だった
それよりも、そんなに使ったの?
どうしよう…
覚えてない…


「どうしたの?」

「ストック…ないみたいだよ?」

「あら?本当?買い置きしたと思ったのに…」


ごめんなさいママ
間違いなく買い置きしてあったよ


「わたし、買ってくるよ」

「ああっ!いいの!2人分位はあるし、いざとなったら石鹸もあるし大丈夫よ、もう危ないから、外出ちゃダメよ?」

「う…ん」


バレないようにしなきゃ…
心配かけちゃいけない





それから、大量のボディソープを買い込んで、部屋のクローゼットの奥に隠した

いつも両親にバレないかと、ハラハラしながら、お風呂に入り、体についた痕が、薄くなる事をひたすら祈りながら、体を何度も洗った


洗ったって罪は消えない
コウは戻ってきてはくれない


コウとルカにつけられた痕も、擦って消えるものでもない
そんなの頭でわかってても、やめられなかった

それでも体の痕が消えれば、罪悪感も少しは薄れて、救われると信じていたから


両親に心配かけないようにと無理して笑い、いい子でいる事
大学でも普通を装って、友達に笑いかける日々も、とても苦しくて、悲しくて、次から次へと襲う不安と、痕が消えてもなお、強迫観念に晒されながら、やめられない行為はずっと続いていた


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