絆 | ナノ


▽  -kizuna- ※05


部屋の中で携帯の音が何度も響いてた
うっすら意識が戻ってきて、頭だけコロリと向けると、そこにコウの姿はなくて、下から聞こえる話し声がする

服…着せてくれたんだ…

たったそれだけなのに、縋りたい気持ちでいっぱいになる
電話が終わって側に来てくれたらいいのにって、消しきれない気持ちがわずかに残ってる…
天井を見上げて暗闇に目が慣れてきて、話し声が止まってもコウは側には来てくれなかった…

痛む体を起こすと荒らされた所から空気を含み、グプっと注がれた精液が溢れてはきても、感覚が全く無くなってた
ベッドから降り、立ち上がると上手く歩けなくて、階段までフラフラしながらたどり着き、手すりを掴む


ダイニングを見渡して、ソファーに座るコウを見つけて、螺旋階段を降りる
コウがコッチを振り返ってわたしを見た
視線を合わせられなくて、キッチンの方をみて床に落ちてる何かが見えた

あれ…ルカの食べ残しのホットケーキ…?
さっきの音ってあれだったんだ…

ギリギリと痛む心を必死で堪えて、割れたお皿の所まで歩いて破片を集めた
割れたお皿ときっと投げつけられたペットボトル…


「おい、危ねぇから触んな…」


ソファーから立ち上がって、コウに腕を掴まれた

もう…ダメなんだ…
許しては…もらえなかった…
もう何も言えない…

枯れたと思った涙が頬を伝う
泣きすぎて目が腫れてる…
こんな顔コウに見られたくない…


「…実家送ってくから、用意しろ」


どうすれば良かったの…?
正直に話せばこんな悲しい結末にはならなかったの?

何を選んでもきっと誰かが傷ついて、わたし達はずっとギリギリのバランスでもってたんだ

コウも、ルカもずっと無理してたの気づかなかった
こんな最悪な形で壊れるなんて思ってなかった

ただ…コウが好きだった
それがルカを苦しめた
いい人ぶって、あれ以上ルカを傷つけたくなくて、今度はコウを傷つけた

大好きで大切な2人の、大切にしていた関係も何もかも失わせてしまった


どんなに謝っても取り返しがつかない


わたしがコウを諦めるから
お願い、どうか神様コウとルカの二人の絆だけは切らないでいて
寂しがりやのルカを一人にしないで


「……荷物…それだけか?」


バッグに最小限の持ち物を詰めて、思い出は全部置いていく
ただ頷いて車に乗り込んだ


「…今まで…ありがとう…」


ちゃんと楽しかった、つき合えて嬉しかった、伝えたかった事はたくさんあるのに、そんな気持ちも言葉にしたらまた泣いてしまいそうで、こんな酷い顔が最後だなんて、コウにみられたくて、言葉を言い出せなかった


コウに背を向けて、玄関を開けて中に入る頃には顔は涙でグチャグチャで、階段を昇り部屋に帰って明かりをつけると、外から遠ざかっていく車のエンジン音が聞こえた

ズルズルと力が抜けてって、床でうずくまっていっぱい泣いた



終わった…
たった3ヶ月しかもたなかった…
ずっと、ずっと側に居たかった


照れたように笑う顔も


困ったように笑う顔も


あの真剣な眼差しも


もう二度とわたしに向けられる事はない




West Beachでの生活はコウが居て、ルカが居て、毎日が楽しくて、ずっと続いてくと思ってた
あの大切な日々がまるで泡のように消えていく
どうしてもっと大切にしなかったの…?
どんなに後悔してもどうにもならない


もうあの幸せな時には戻れない




To be continued…


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