絆 | ナノ


▽  -kizuna- 04


West Beachに着くとコウがいつもの定位置に腰掛け、車のキーをテーブルにポンッと投げた
何で来ちゃったんだろう…
どうしていいかわからず、ソワソワしてたらコウがいつものように隣を空けてくれた

隣に座ってみても、落ち着かなくて髪の毛のハネを直してみたり、意味のない行動を繰り返すわたしをコウが訝しげにその様子をみてる
どうしようまともに顔もみれない


「お前今日一回ここにきた?」

「…どうして?」


ドクンっと心臓が早くなるのが分かる
コウに聞こえるんじゃないかと思うくらい全身が心臓みたいになる


「シーツ替えただろ?」

「…うん」


シーツ今日替える日じゃないのに、替えちゃったから絶対変に思ってるんだ
どうしよう…何も言い訳が思いつかないし、今喋ったら絶対に声が上擦る

来ちゃいけなかった

頭の中がパニックになって、逃げ出したい気持ちが大きくなって来る
グルグル頭の中で色んな言い訳を必死で捻り出そうとしてたら、急にコウに抱きしめられて、思わず体が硬直してしまった


「大丈夫か?」


耳元で優しい声が聞こえる
様子がおかしいから、多分心配してくれてる…
優しくされる程涙がこぼれそうになる
コウに優しくしてもらう権利なんかないよ…

優しく抱きしめられて、決意が揺らぐ
わたしはこの手を離せるの?
いつも後ろから抱きしめてくれる時、コウはチュッ、ってキスしてくれる
わたしが困らない様に、首筋には絶対痕を残さない様にしてくれる
そんなコウの優しさがとても好き

抱きしめられてる温度が心地好くて、いつの間にか体をコウに預けてた
急に抱きしめる腕に力が込められ、いきなり服の中に手を入れられる


「ちょっ…とコウ!ルカが帰ってきちゃう!!」

「かんけーねぇ」

「や…待って…!ん…っ!!」


ブラをたくしあげられ、そのまま直接包むように手が胸を揉み、コウの方に顎を向けられ、唇を重ねられ、応えそうになる自分を止める

ダメ…!!抱かれてしまったら全てがバレてしまう!!


「ダ…メ…!コウ!!い…やぁっ!!」


コウが強引にソファーに押し倒そうとしてきて、それを必死で拒み、何とか腕の力が緩んだ隙に逃げ出した


「…悪かったな」


気が削がれたのか、雑誌に手を伸ばしコウがそれを読みはじめた
コウの機嫌がすごく悪くなった…
エッチ断っただけで、こんなに機嫌悪くなるなんて初めてだ…
もし本当の事を言ってしまっても、今までみたいにわたしの事を好きでいてくれる?
本当はコウに抱かれたいよ…
どうしていいか分からなくて、ちょっと泣きそうになる


「ごめ…んなさい」


言ってしまったら楽になれるのかな…?
コウから離れる様にカウンターに座り、乱された洋服を整えて、コウをみる
もしも何があっても好きだと言ってくれるなら全てを話したい…
ただ、わたしを好きだって言う確信が欲しい


「…あ、あのね…わたしの事…好き?」

「…いちいち言わせんな」


やっぱり言ってくれない…
言えない…絶対に…

じゃあ…体の痕が消えるまで凌げれば、別れずに済むのかな…

悲しくなって、カウンターをみるとルカに作ってあげたホットケーキがあのままの状態で乗ってた
ドクン、とまた心臓が早鐘のようになりだす
わたしが本当の事言ったらルカはどうなるの?自分だけ楽になろうとしてた

もうここに来ちゃった時点で間違いだった…
コウが来ても会っちゃいけなかった

体の痕消えたって、事実は変わらない

別れなきゃ…

言わなきゃ…わたしが他の男の子が好きっていえばいい…
傷つけるかもしれない、けどもうこれしか思い浮かばない
最低な女だとコウから見限って…


ルカはコウから絶対離れちゃいけない
昔のルカみたいにはなって欲しくない
ルカが一人ぼっちになるのはイヤ
わたしのせいでこれ以上ルカを傷つけたくない


「おい、ちょっと来い」

「コウ?」


呼ばれてコウがスタスタと自室に戻りはじめる
わたしはそれを追うように、後ろに続く部屋に近づくたびに、昼間の事を思い出して、足取りが重くなっていく



出来れば…その部屋には入りたくない




To be continued…


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