絆 | ナノ


▽  -kizuna- 04


バシャバシャと何度も手を洗っていると、携帯の音が水音に紛れて聞こえてきた
着信音はコウ…どうしよう…
とにかく出なきゃ変だと思われる


「はい」

『お前どこいんだよ!』

「…あ…実家に」


少し怒った感じでコウが居場所を聞いてくる
時計をみると、20時過ぎてた…いつもならご飯作って待ってる時間…
わたし何時間ここに居たんだろう自分が怖い…こんなのパパとママに知られたら、絶対心配される
良かった…旅行行ってて…


『まだ帰ってこねぇの?迎えにくんぞ?』

「ううん…大丈夫…もう少ししたら帰る…つもり」


今は帰れないのに、何でこんな事言ってるんだろう…声を聞けば聞くほど、会いたくて堪らない
淋しい…会いたい…抱きしめて欲しい
この体の感覚を塗りかえて欲しい


『どうした?具合わりーのか?』

「…大好き」


心配される声に泣きそうになって、思わず気持ちが溢れ出してた

嫌…絶対に別れたくない…
だけどこんな体じゃ…


「なっ!お前なんだよ急に!」

『…コウ…は?』

「言わなくても分かれよ!!あーもう切るからな!!早く帰ってこいよ!!」


そんな事聞いたって、絶対コウは好きなんていってくれる訳無いのに、けど今聞きたくてしょうがなかった…こんなわたしでも、好きだって言われたら少しは救われるような気がしたの
たったその一言が欲しい
それは…利己的で狡い事なのかもしれない


会いたい…



一方的に切られた携帯を握りしめて床に座り込んだ
別れるとしたら何て言えばいいの…?
ボーッとしながら、別れの言葉を探してみても、コウを好きなわたしには何一つ思い浮かばない
しかもたった今好きだって言ってしまった
後先考えずに行動してしまう自分が嫌になる
別れたいっていっても矛盾だらけになる


苦しい!苦しい!
どうすればいいのか分からない!!


別れたりなんかしたくない



家の外に車が止まる音がした
窓からみると、コウが車の中にいるのがみえた急いで服を着替えて、体が磁石で吸い寄せられるように、玄関に向かう

慌てて近くにあったミュールを履いて、ガチャッ、と扉を開ける


「うわっ!何だよ急に出てくんじゃねぇよ!」


そこには、ちょっとビックリした顔で、チャイムを押そうとしてる大好きな人が立っていた
思わず笑顔がこぼれてしまう


「お前様子変だったから、その…心配で…迎えに」


どうしてそんなに優しいの?
そんなに優しくされたら、泣いちゃいそうになる


「…ありがとう」

「帰るぞ」


必死で泣くのを堪えてたら、コウが車に乗れって感じで助手席のドアを開く
行けない理由なんか口に出せなくて、そのまま車に乗ってしまった

West Beachが近づいて来る、もうこの車からみる景色も最後なのかな…
コウとルカと3人で仲良く帰った道





バレなければ…このままで居られる…?


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