絆 | ナノ


▽  -kizuna- 05


バイトから帰ってくると、昨日寝てなかった分で、そのまま倒れる様に寝てた
ドアをノックする音が聞こえて、訪ねて来る人間もいるはずない、間違いだと無視し続けても、なり止まないノック音、次第に大きくなってイライラしてドアに向かう


「何!?」

「何だ寝てたのか?」


ドアを開けると親父
正確にはコウの親父だけど


「…どうしたの?」

「家具も、冷蔵庫も何もないんだろ?」

「ああ、うん…」

「持ってきたから運ぶの手伝え」

「え…?」


持ってきたって?
正直助かるけど、どういう事…?
親父についていって下に降りると、軽トラに冷蔵庫とか簡単な家具が乗ってた
West Beachで使ってたやつだ
コウは…どうしたんだろう?


「お前ら喧嘩したのか?」


黙ってても、俺にもコウにも顔に殴った跡があるし、何ていいようもない
積み荷のロープをはずしながら、コウみたいに親父が笑い、俺の頭をポンと撫でる


「琥一と同じ態度しやがって、似てんなお前ら、喧嘩したからって、別にいきなり別々に暮らさなくてもいいだろ?」

「…うん」

「昨日アイツが帰ってきて、家具いらねぇから、お前んとこ持ってってくれって」

「そ…う…、ありがとう…助かる」


泣きそうになった
あんな事したのに、俺の事考えてくれんの?
どこまでお人よしなんだよ

親父と家具を中に運んで、少しだけ部屋らしくなった家で、親父が口を開く


「なぁ琉夏」

「何?」

「お前のやりたい事って何だ?」


決まってない…
少しだけ夢見てた事はある
設計とかどうかなって
俺が設計した家をコウが建ててくれたらいいな、とか思った事もあったりした

コウは大学行ってないし、俺は本当の息子じゃないし、これ以上迷惑かけるわけにはいかない
それは夢のままでいいんだ
もう…一緒には出来ないし


「どうした?」

「ううん、何でもないよ」

「言わなきゃわかんねぇぞ?」


それは…今、痛いほどわかるよ
だけどそれは俺が言っていい事じゃないんだ


「まだちょっと考えてるんだ」

「何を?」

「まぁ、色々…」

「そうか…、俺としては琉夏と琥一で、うちを盛り立ててくれんのが夢だったんだけどな、ほら琥一だけだとアイツバカだし、俺の代で終わるだろ?」

「そんな事ないよ」

「お前が居なきゃ、はば学なんか合格してねぇよ、卒業出来てんのも不思議なくれぇだしな」


違うよ…
きっとコウは美奈子との記憶が引っ掛かって、思い出を追ったんだ
昔から美奈子の事が、自覚なくて好きだったんじゃないかな
俺もきっとそうだけど…

美奈子が居ればコウは強くなれる
……じゃあ、今は…?


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