▽ 絆 -kizuna- 04
ベッドに目を向けたコウの顔が、苦しそうに歪んだ。
ベッドの上はグチャグチャのシーツに、点々と掠れた血、悲惨な行為の残骸だけが残ってた。
それだけコウがキレてたって事で、そこに至らせたのも俺なんだ。
美奈子に相当なトラウマを負わせたかもしれない。
全部俺が壊したんだ…。
これ以上見てんのが苦しい。
「…荷物取りに来ただけなんだ。コウどいて」
コウの体を押し退けて、自分の部屋から要るものだけ出した。
適当にバッグに詰め込んでたら、コウが話し掛けてきた。
その声はいつもよりも頼りなくて、寂しそうな声だった。
「…マジで出てくのか?」
「うん、もう家借りたし、ここもどうせすぐ取り壊されちゃうだろ?元々出ていくつもりだったんだ」
それは嘘じゃないよ。
コウの幸せの邪魔はしちゃいけないっては思ってた。
コウの幸せを願わなくちゃいけなかったのに、一緒にいると居心地が良かった。
ずっとユラユラと二人に甘えてた。
今だって俺はただのフリーターで、コウや美奈子みたいに何かに一生懸命な訳じゃない。
「じゃあね…」
詰め込んだバッグを抱えて、階段に立ち尽くしてるコウを見た。
謝らなきゃ…。
口の中がカラカラで、言葉が発せない。謝って済む問題じゃない。
結局謝れずに階段を駆け降りて、俺はまた逃げ出した。
コウも美奈子も本当に大切なんだ。
初めて心を開ける二人だったから。
その二人から拒絶されて、嫌われるのが1番嫌だったのに、俺は自分でそっちを選んでしまった。
出来ることなら、誰か時間を戻して欲しい。
そしたら二人の幸せを願うから。
あったかい二人の側に、いつまでも居たかったのに。
To be continued…
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