絆 | ナノ


▽  -kizuna- 04


コウの体がビク、と震えた。
本当は言いたくても、コウの性格じゃ言えないなんて事分かってる。

だから美奈子を大切にしようって気持ちは、全部行動に現れてた。

名前を呼ぶ時も、美奈子に触れる時も、隠しきれない好きが見えてた。
態度がわかりやすすぎるんだよ。

早く一人前になりたくて、ガムシャラに働きまくって、それも全部美奈子を幸せにしたかったからだろ?

俺はそこにつけ込んだんだ…。
少しだけでいい…。
ほんの少しでも俺に揺れたなら、どんな事してでも自分のモノにした。

だけど美奈子は絶対傾かなかった。
毎日、毎日コウの話ばっかりしてて、ウンザリする程コウが好きって事ばかりが突き付けられる。

諦めよう…。

そう思っても、毎日好きな女と顔をつき合わせてれば、一瞬でそんな決意もガラガラと音を立てて崩れ去っていく。

あんなに触れられる所にいるのに決して触っちゃいけない。
拷問だよ?

わかってるよ自分が言い出した事だ。3人で暮らそうって。
こんなに苦しい思いをするなんて思ってなかった。
純粋に楽しいだろうって思った。
美奈子への気持ちも、緩やかに消えていくって思ってた。


コウが大切だったから、諦められると思ってた。
二人のあんな声を聞くまでは。

俺は美奈子を抱けない。
コウは美奈子を抱ける。


心底ムカついた。
俺とお前じゃ違うんだって、突き付けられたみたいで。


裏切られた気がした。
俺だけ取り残されて、置いていかれる気がした。


「…俺はルカみてぇになりてぇよ」


ポツリと呟いたコウの顔は泣きそうに見えた。
コウにもこんな顔させるつもりなんかなかった。
今もひねくれた事しか言えない。
素直に謝る事も出来ない。
先にズルい事を考えたのは俺なのに。

口の中が鉄の味がする。拭ってコウを見上げた。


「それ厭味…?俺はコウみたいになりたいよ」


そんな俺だからコウになりたいよ。
お前の周りに集まって来る人間は、本当にお前を慕ってて、上辺だけ撫で回す様な奴らじゃない。
コウは真っすぐで、とても綺麗なんだ。
だからそんな奴らが集まってくる。美奈子はそんなコウだから好きになったんだ。

好きにならないわけないよ。


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