▽ 絆 -kizuna- 04
やっぱり気づいてた。
なのに何であんな酷い事出来るんだ…。
どうして受け止めなかったんだ。
一瞬気を奪われて、コウの膝がミゾオチにモロに入り息が止まる。
痛てぇ…けどどんなに殴られたっていい。それなら俺だって言いたい事がある。コウがなんでも面と向かって言わないからだ。
顔をあげた横にゴツい拳が近づき、それを受け止める。
「コウ…俺への当て付けにヤッただろ?マジで壊れてしまえばいいと思ったよ」
「ふっ…ざけんな!!」
気が済むまで殴ればいい。
「俺が美奈子の事好きだって分かってたんだろ!?何であんな事すんだよ!!俺だってあんな傷つけるような事したくなかった!!止まらなかったんだ!!」
常識で考えたって力でかなうハズもない美奈子にあんな事した俺が断然悪い。
ましてやコウの彼女で、あんなにコウを好きだって分かってた。
俺になびかない事だってわかってた。
ただ一度だけで良かった。
俺を見て欲しかった。
叶わない願いだったとしても、抱きたくて仕方なかった。
コウは美奈子を抱きしめて、慰めてやらなきゃいけなかったのに。どうして俺と同じ事してんだよ。
悔しくてコウを殴って、馬乗りになってもう一度思いっきり殴りつける。
拳も心も痛い。
「俺だってお前と浮気したなんて思わなきゃ、あんな酷ぇ事しねぇよ!!相手がお前だから許せねぇって思ったんだよ!!」
あんだけ好かれてんのに、何で浮気するとか思えんだよ。
「美奈子が浮気する訳ないだろ!?あんなに好かれて、愛されて、そんな事もわかんねーのかよ!俺がどんな気持ちでお前ら見てたと思ってんだよ!」
眉間にシワを寄せ、襟元を掴み上げられ、力任せに床に叩きつけられた。
痛ってぇ、このバカ力…。
一瞬息が止まって、コウを睨みつけた。
「じゃあ、お前は俺が仕事で帰りが遅くなって、その度に美奈子とお前は仲良くなってて、わかんねぇ話ばっかされて、お前の方が美奈子の事知ってて、不安になる気持ちなんか分かんねぇだろ!?しかもお前が美奈子を好きだって気付いてんのによ!」
「それだったら早く帰って来ればいいだろ!?」
「仕事なんだから仕方ねぇだろが!」
「じゃあ、好きの一つも言ってやれよ!」
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