絆 | ナノ


▽  -kizuna- 02


ホットケーキの甘い匂いに包まれながら、目の前にある雑誌を開き、物思いに耽る。


ここを出なきゃ…。
もう始めの頃みたいに3人じゃ暮せない。
美奈子への想いが募り過ぎてる。このままじゃきっと2人を傷つける。
どっちも失いたくない…。


「ルーカ!!出来たよ!!」


その言葉にハッとして顔を上げる。オレを何度も呼んでいたのか、プゥっと頬を膨らませる。
怒った顔もカワイイよ…。
口に出せたらどんなに良かっただろう…。


「…ああ…ゴメン!サンキュ」


カウンター越しにたっぷりのシロップと、バターを乗せたそれを受け取って、ナイフで切り分けていく。


「おいしい?」


頬づえつきながら、首をかしげ美奈子がきいてくる。
見つめられて胸が高鳴った。


「うん!スゲーうまいよ!」


ニッコリ笑いながら賛辞を並べてみても、本当は味なんかわからない位、色んな感覚が麻痺してる。


「ホットケーキそんなに好き?」


ニコニコしながら問いかけられ、オレは“好き”の言葉に反応してしまう。


「好きだよ」


お前が…。


直接伝えられない言葉を笑顔で間接的にいってみる。
ずっと好きなんだ…。


「ちゃんとご飯も食べなきゃダメよ?」


子供を諭すように言われた。
やめろよ…コウにはそんな言い方しないだろ?


「ついてる」


口の横についたシロップを指で拭われ、ビックリして思わず手を掴んでしまった。
そんな事されると、我慢できなくなるだろ?
本当にギリギリなんだ…。

出来ることならそのまま手を掴み、引き寄せて、掻き抱いてしまいたい。


出来るハズもないのに。


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