▽ 絆 -kizuna- 05
何時間も時間を潰して家に戻ると、軽トラに積んでいた荷物は消えてた。
ちゃんと持ってってくれたんだな。
リビングにはお袋が作る飯の匂いに包まれて、くつろいでる親父の姿があった。
「…親父、悪かったな」
「ああ、お前明日からまた忙しくなんだから、覚悟しとけよ」
TVを見ながら、特にルカの事を話してくるわけでもない。
ルカはちゃんと飯食ってんのか?
アイツの事だから、毎日ホットケーキばっか食って体壊したりしねぇよな…。
バカな事考えたりしねぇよな?
「…ルカは…、どうしてた…?」
親父は俺をチラリと見てため息をつく。
「お前らなぁ…、そんなお互いの事心配して気になんなら、自分らでどうにかしろよ」
心配するってルカが俺を…?
ムカつきはされても、心配されるハズねぇんだ。
意味がわかんねぇ…。
「まぁ、今日はバイト行くっつってたぞ。お前も見習えよサボってねぇでよ」
バイト行くって事は、バカな事考えねぇでちゃんとしてるってことだよな?
「わかった…」
今頃ルカは一人で頑張ってんだ…。
俺はこのままでいいのか?
実家にノコノコ帰ってきて、ルカにばっかり苦しい思いさせてる。
もし、親父が言うように、ルカが俺を心配してくれてんならそれを信じたい。
少しでも…、ルカを助けてやりたい…。
嫌がられても、それでもやっぱりルカは弟なんだ。
たった一人の俺の弟なんだ…。
一度、ルカが冗談めかして言った事がある。
ルカは覚えてねぇかもしんねぇけど、それが印象的でずっと心に残ってた。
『俺が設計した家建ててよ』
もしそれがルカの本心で、進学したかったのに、親父に遠慮して言えなかったんだとしたら、ルカはそっちの道に向かうかもしれない。
大学か、専門学校…。
それを俺が助けられるなら、少しはルカに報いてやれるかもしれない。
これは憶測で、ルカが俺を必要としてくれるなら、きっとアイツはそれを選ぶと思う。
そうあって欲しい…。
俺のただの願望だけどな。
「なぁ、給料増やす為にゃどうすりゃいい?」
「資格取れよ」
「何の?」
「テメェでいるもん調べてみろ」
「ああ」
例えルカがその道を選ばなかったとしても自分の為にもなる。
俺は今、自分が出来る事をする。
忙しくしてりゃ、美奈子の事ばっかり考えずにいられるかもしれねぇ。
もう一度、ルカと対等に話せるように…。
To be continued…
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