▽ 絆 -kizuna- 05
冷蔵庫やルカが使えそうな家具を全部軽トラに積み込み、途中で手伝って貰ったお礼にメシを奢り、実家に戻ると親父が外で作業してた。
「琥一、テメェどこほっつき歩いてんだ」
「あ?」
「昨日は仕事サボるわ、今日も居ねぇと思えば、軽トラまで勝手に持ち出しやがって。クビにすんぞ」
「悪りぃな…」
「テメェが素直だと気持ち悪ぃな。何かあったのか?琉夏はどうしたんだ?アイツ急に一人で暮らすって、お前聞いてなかったんだろ?お前ら何かあったのか?」
親父になんか言えるかよ。
一人暮らしの事だって聞いてねぇよ。
ルカは何でも肝心な事は言わねぇんだ。
なぁ、ルカ…お前だって、伝えなきゃいけねぇ事…話さねぇじゃねぇか…。
言わなきゃわかんねぇんだよ…。
「親父頼みがあんだけどよ。俺、今から出掛けっから、その軽トラの荷物ルカに持ってってくんねぇか?」
「自分で持ってきゃいいだろーが」
持っていけるわけねぇだろ。
どの面下げてルカに会やいいのかわかんねぇ。
「今日は…、無理なんだよ。ルカの奴一人暮らし始めんのに、多分なんも持ってねぇよ。最低限必要なやつは積んで来たから、後頼んだぜ、親父」
「ちょっと待て!琥一!」
親父の制止も振り切って、車に乗り込んで、時間潰しに当てもなくただ車を走らせた。
こうやって、たまには美奈子をどっかに連れて行ってやれば良かった。
高校の頃は割と色んなトコ遊びに行ってたな…。
最近じゃ美奈子がデートしてぇっつても、忙しいばっかでマジで何処にも連れてってやってねぇ。
時間なんて作ろうと思えばいくらでも作れたハズだった。
楽しませてやる事も、安心させてやる事もしなかった。
ただ…美奈子が側に居てくれるだけで俺は満足してた。
甘えきってた。
それが壊れそうな気がして怯えてた。
何もしてやんなかったクセにな…。
未来を夢みてた。
美奈子と一緒になりたくて、早く認められるようになろうと焦ってた。
何より今を大切にしなきゃいけなかったのにな。
美奈子には俺みてぇな奴じゃなくて、ちゃんと幸せに出来る男が現れればいい。
ずっと美奈子が笑って居られるように。
あんな苦しい顔をさせねぇ様な守ってやれる男がいい。
優しくて、俺と違って頭も良くて、ちゃんと好きだと伝えられる様な…。
くそっ!
美奈子が他の男に抱かれんのなんか考えたくもねぇ!
俺には二度と笑ってもくれねぇのに。
二度と触れる事も叶うわけねぇのに…!
忘れなきゃいけねぇのに忘れられない。
美奈子より好きになれる女なんか存在しねぇのに…。
ガン、とハンドルを叩いて助手席を見ると、さっきのWest Beachから持ってきた甘ったらしいジュースのペットボトルが美奈子の代わりに乗ってた。
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