▽ 絆 -kizuna- 04
「美奈子が浮気する訳ないだろ!?あんなに好かれて、愛されて、そんな事もわかんねーのかよ!俺がどんな気持ちでお前ら見てたと思ってんだよ!」
お前の方が美奈子の事わかってるみてぇに言ってんじゃねぇよ。
馬乗りになったルカの襟元を掴み上げて、思いっきり床に叩きつけ体勢を返した。
ルカが衝撃で、ケホッと軽くむせて俺を睨む。
「じゃあ、お前は俺が仕事で帰りが遅くなって、その度に美奈子とお前は仲良くなってて、わかんねぇ話ばっかされて、お前の方が美奈子の事知ってて、不安になる気持ちなんか分かんねぇだろ!?しかもお前が美奈子を好きだって気付いてんのによ!」
「それだったら早く帰って来ればいいだろ!?」
「仕事なんだから仕方ねぇだろが!」
「じゃあ、好きの一つも言ってやれよ!」
核心を突かれて体が震えた。
そんな事言われねぇでも、もう分かってんだ、照れ臭くて言えなかった。
どんなに後悔してもおせぇ。
俺がもう少し器用で、何でも上手くこなせる男だったら、あんなに美奈子を傷つける事もなかった。
ルカにこんな思いをさせる事もなかった。
ルカが美奈子を好きだって気づいてどうにかしたかった。
言葉で言うのもカッコ悪ぃ気がして、自分の女だって誇示したかった。
美奈子は誘えば断んねぇし、ルカもヤッてんの聞けば諦めるって安易に考えて二人の気持ちを利用した。
ただ…ルカがそこまで追い詰められてるなんて思いもしなかった。
よく考えりゃ、好きな女がヤッてんの聞かされて普通でいられる訳なんかねぇ。
2人にちゃんと気持ちを言葉にしなかったせいだ…。
「…俺はルカみてぇになりてぇよ」
ルカは頭が良くて、何でも自分で決めて、いつも俺より先を歩いてる。
俺はバカだからそんなお前をいつも羨ましいと思ってた。
周りとも上手くやれて、お前の周りにはいつも人がたくさんいる。
美奈子はお前みたいな男とつき合ってりゃきっと幸せに暮らしてんだ。
だけど…あの手を離せなかった。
誰にも渡したくなんかなかった。
あんな酷い事するつもりじゃなかった。
誰よりも幸せにするつもりだった。
「それ厭味…?俺はコウみたいになりたいよ」
俺の体を押してルカが上体を起こし、口を拭って俯いた。
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